2021 Fiscal Year Annual Research Report
煎出で起こる生薬成分の化学変化の解明による薬効理解のための基礎的研究
Project/Area Number |
19K07144
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
好村 守生 松山大学, 薬学部, 准教授 (80454891)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 漢方 / 煎出 |
Outline of Annual Research Achievements |
過年度の研究成果を基に,散剤4種(当帰芍薬散,加味逍遙散,五苓散,抑肝散),丸剤2種(桂枝茯苓丸,牛車腎気丸)の熱水及びメタノール抽出物を調製し,HPLCによる主要成分解析を行うとともに,医療用エキス製剤との成分比較を実施した.その結果,いずれの漢方処方においても熱水抽出物とメタノール抽出物とではHPLCにおける検出成分またはそれらの含有比率が異なり,特にケイヒを含む処方の熱水抽出物では,ケイヒのメタノール抽出物で約80%の主成分として観察されたシンナムアルデヒドが微量のみ検出されるなど,差異は顕著であった.また,没食子酸やペオノールなどの低分子フェノール類,ウリジンやアデノシンなどの核酸類,クロロゲン酸などのカフェオイルキナ酸類の存在比率が異なることが明らかになった.このことは,熱水とメタノールとでは化合物の溶解性が異なること及び加熱抽出による化合物の分解に起因すると考えられる.また,熱水抽出物と医療用エキス製剤では,若干の成分組成の差異を認めたが,このことは朮にソウジュツとビャクジュツのどちらを用いるかによる差異や,使用した生薬の産地や季節変動によるものと推察された. 本来の散剤や丸剤では生薬の粉末又はそれを成形したものを摂取するため,実際にはメタノール抽出物で確認された化合物に加えて多くの水溶性成分が体内に吸収されていると考えられるが,熱水抽出物やエキス製剤では水溶性成分のみが抽出されているとともに,例えばシャクヤクに含まれる加水分解性タンニンが分解されて生じる没食子酸のような,加熱処理によって生成した低分子化合物が多く検出されるなどの変化を認めた.本来の散剤を摂取した場合においても消化管内で代謝等を含む分解が起こり,最終的に熱水抽出物と同様の成分が吸収される可能性は否定できないが,メタノール抽出物のみに確認された化合物については,摂取されないことになると考えられる.
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