2019 Fiscal Year Research-status Report
バクテリオファージの産業利用を目指したファージバンクの構築
Project/Area Number |
19K07146
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
稲葉 桂子 (長谷川桂子) 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 研究員 (40448709)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | バクテリオファージ / 流入下水 / 緑膿菌 / 口腔内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、ファージライブラリーの構築にあたり、手持ちの大腸菌と緑膿菌を宿主として、環境サンプルの採取、および濃縮方法等の検討を行った。環境サンプルとして、流入下水と土壌サンプルを用意した。岐阜市のプラント施設より入手した流入下水はタンパク質成分をPEG/NaCl沈殿で濃縮し、スクリーニングサンプルとした。また土壌サンプルはバッファーと混合し、上清をフィルターろ過したものを用いた。スクリーニングの結果、大腸菌もしくは緑膿菌に感染できる数種のファージを得た。また、上記とは別に変異原物質マイトマイシンCを用いて緑膿菌ゲノム上に存在するプロファージの誘発を試みたところ、数種のファージを得ることができた。現在、プロトコールの最適化、および得られたファージの宿主域を確認している。 上記と並行して、有用ファージバンクの柱となり得る細菌種の選定について検討を進めた。近年、口腔内常在菌がヒトの全身疾患の起因菌となりうる、という報告が多数なされている。「口腔内を健やかに保ち、口腔内細菌がもたらす病を未然に防ぐ」ことは被介護者の増大が社会問題となっている現代において非常に意義深いと考え、口腔内細菌を宿主としたファージの単離を目指すことにした。まず岐阜大学医学系研究科倫理審査委員会にて、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき、本研究の承認を得た。ボランティアより口腔内サンプル(唾液、スワブ等)を採取し、ファージおよび口腔内細菌の臨床分離株の取得を試みた。Streptococcus mutansを宿主としたスクリーニングではまだファージを単離できていない。一方で、いくつかの口腔内細菌の臨床分離株を採取することに成功しており、16S rRNAシーケンシングによって属レベルでの同定を進めている。引き続き、宿主菌の選定および、ファージの単離を試みる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象宿主菌の選定、ヒト倫理申請の承認および宿主菌の培養方法の最適化に時間がかかり、今年度はハイスループットスクリーニング法の検討まで至らなかった。一方で、研究を進める上での環境整備、および流入下水、土壌といった環境サンプル由来のファージの取得等、技術的な予備実験を順調に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、引き続き宿主菌の選定と培養方法の確立を進める。口腔内細菌に加えて、農作物の病害を引き起こす細菌やその他の病原性細菌についても標的とするか検討していきたい。 昨年度に引き続き、標的細菌に対するファージは環境および人体由来のサンプルから単離を試みると共に、手持ちの菌株および得られた臨床分離株からはプロファージの誘発を試みる。ファージの単離方法についても引き続き最適化を進める。スクリーニングで得られた感染力が強いファージを使用して、ハイスループットスクリーニング法の検討を開始したいと考えている。得られたファージについては順次、宿主域を調べる。宿主域が広く、有用性が高いと考えられるものは次世代シーケンサーを用いてゲノム情報を取得し、既存ファージとの比較等、精査を進める。また、得られた臨床分離株は16Sシーケンシングによる分類を行い、必要に応じて全ゲノムシーケンシングを実施して菌株を同定する。得られた菌株とファージは系統立てて保存していく予定である。
|
Research Products
(1 results)