2020 Fiscal Year Research-status Report
バクテリオファージの産業利用を目指したファージバンクの構築
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19K07146
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
稲葉 桂子 (長谷川桂子) 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 研究員 (40448709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / ファージバンク / 薬剤耐性菌 / ファージセラピー |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は緑膿菌と口腔内細菌を宿主とするファージの単離・収集を行った。
緑膿菌は、PAO1株およびPA14株に加えて、薬剤耐性臨床分離株を使用した。前年度と同様、環境サンプル(土壌、流入下水など)を採取し、それらに含まれるファージをスクリーニングした。その結果、緑膿菌に感染するファージを複数得ることができた。これまでに単離した全ての緑膿菌ファージに対する、PAO1、PA14および臨床分離株のファージ感受性を調べた。ファージの宿主域とその殺菌強度についてまとめたところ、用いた緑膿菌全株に感染できる広宿主域を持つファージがいることが判明した。また、薬剤耐性菌を殺菌できるファージは土壌に比べ、下水や活性汚泥から単離したファージに多いことがわかった。次に、すべてのファージからゲノムを抽出し、制限酵素断片長多型(RFLP)解析を実施した。宿主域のデータと合わせることでファージをグループ化した。今後は各グループから代表を選定し、ゲノム配列を解読する予定である。
口腔内細菌に感染するファージのスクリーニングのため、ヒトの口腔内サンプルのサンプリングを計画していた。2019年度に、ヒトを対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づいた研究申請が受理され、サンプリング準備を進めていたが、新型コロナウイルス蔓延の状況を鑑み、サンプリングを延期せざるを得ない状況になった。一方、これとは別に、標的口腔細菌を変異原物質マイトマイシンCやUVに暴露することでプロファージの誘発を試みた。これまでのところファージ誘発は観察されていない。2021年度も口腔内からのサンプリングができない状況が続くと予測されるため、標的細菌の変更等を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑膿菌を宿主としたファージのスクリーニングについては順調に進み、手持ちの薬剤耐性菌に強い感染力を持つファージを得ることができている。また、得られたファージの宿主域やRFLP解析による分類も順調に進められている。2020年度当初に研究室の移動があり、ハイスループットスクリーニング法の検討に使用することを考えていたプレートリーダーが使用できず、従来の寒天プレートを用いた方法でスクリーニングを実施してきた。現在はプレートリーダーが使用できるようになったため、細菌の培養条件等の検討やファージのスクリーニング条件およびスクリーニング方法の有効性等の検討を進めている。一方で、口腔サンプルの採取は中断せざるをえない状況であり、標的細菌の再考が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトの口腔サンプルの採取が困難な状況を受け、2021年度は標的細菌の再選定と入手を早期に進める予定である。ファージセラピーの必要性が高い、例えばESKAPE(大腸菌、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ属菌、アシネトバクター属菌、緑膿菌、肺炎桿菌)に代表される多剤耐性細菌などを候補として検討している。
ファージスクリーニングは寒天プレートを用いる方法で成果があがっており、2021年度も引き続き同手法を用いる予定である。これに加えて、ハイスループットスクリーニング系を立ち上げることも考えている。タイタープレート中で液体培養した細菌に環境サンプルを混合し、濁度でモニタリングする方法を試行する予定である。
また、臨床分離株からプロファージを誘発することも試みる予定である。上述のスクリーニングから得られたファージと合わせ、単離したファージの宿主域を調べる。宿主域が広く、有用性が高いと考えられるファージはゲノム配列を解読し、既存ファージとの比較、遺伝子のアノテーション付け等、精査を進める。2021年度の後半には、得られたファージを系統立てて保存し、ゲノム情報や宿主域の情報をデータベース化していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額となった34,943円については、物品費として研究用消耗品の購入をする予定であったが、物品の入荷に遅延が生じたため年度内に購入できなかった。 2021年度分の消耗品費に加えて使用する予定である。
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