2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K07153
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
高橋 哲史 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (40449004)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膵臓がん / エクソソーム / 転移 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
肝転移膵臓がん細胞株(KMP2)の培養を通常のプラスチック培養(2D培養)および低吸着シャーレを用いた3D培養を行い、これら細胞の遺伝子発現を比較した。その結果、2D培養時に比べ、前立腺幹細胞抗原PSCAの発現上昇が認められるなど生体内の膵臓がん細胞と同様な遺伝子発現パターンを示す3D培養時において、EPS8およびGPRC5CのmRNA発現が、それぞれ6.4±1.4倍および27.0±2.1倍有意に増加した。さらに、3D培養したKMP2細胞の培養上清よりTotal Exosome Isolation試薬を用いて濃縮したエクソソーム様画分中の蛋白質発現をウエスタンブロッティングにより解析した。その結果、これら画分において、エクソソームマーカーCD9に加え、EPS8やGPRC5Cが検出された。EPS8やGPRC5Cは膵臓がん患者由来のエクソソーム中に多く含まれており、一部膵臓がんの悪性化に関与するとも報告されている。そのため、3D培養したKMP2細胞は、エクソソームの機能解析に有用なツールであるものと考えられた。 更に、エクソソーム中のEPS8を標的とした創薬を行うために、3D培養したKMP2細胞において、EPS8をハイスループットに検出出来るための評価系の構築を試みた。具体的にはゲノム編集の応用法であるPITCh法を用い、宿主EPS8遺伝子の3'末端に高感度検出可能な低分子タグタンパク質であるHiBiTを挿入する為のベクター作りを行った。また、KMP2細胞に効率よく作製ベクターを導入するトランスフェクション条件を確定した。構築したベクターを用いることにより、エクソソーム中でのEPS8の発現量を高感度で定量可能なEPS8-HiBiT融合蛋白質を発現する細胞の作製が可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3D培養したKMP2細胞がエクソソームの評価系に有用であることが明らかとなったため、本細胞を今後の種々の検討に用いることが可能となった。エクソソームの検出がTotal Exosome Isolation試薬を用いて可能であることが明らかとなったため、薬剤探索の為のハイスループットの評価系にも利用可能である。また、EPS8遺伝子の3'末端へのHiBiTノックイン用ベクターの構築に成功した為、EPS8のハイスループット検出評価系の構築に道筋ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
エクソソームの濃縮を超遠心法でも行い、Total Exosome Isolation試薬での結果と比較する必要がある。PITCh法のベクターを構築したことから、これらを用いてKMP2細胞のEPS8の3'末端にHiBiTのノックイン を試みる。構築した細胞を用い、エクソソーム中のEPS8をハイスループットに検出するスクリーニング系の構築を行う。その後、構築したスクリーニンング系を利用し、エクソソーム中のEPS8の機能を阻害する和漢薬の探索を行う。 また、以前の検討により転移調節候補因子としてピックアップしていた遺伝子群に対して、申請書ではPITCh法を用いた安定的遺伝子欠損志望株を作成するとしていたが、その後の条件検討により、27merのsiRNAをエレクトロポレーション でトランスフェクションすることにより、3D培養したKMP2細胞で遺伝子抑制実験が可能であることが明らかとなった。そこで、27merのsiRNAを用い、候補因子を発現抑制した時のKMP2の生物学的機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
年度末にある日本薬学会にむけて出張旅費などを見込んでいたが、コロナウイルスの影響で学会が中止になり旅費を必要としなくなった。
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