2019 Fiscal Year Research-status Report
生物時計システムの制御を基盤とする新規天然薬物の開発
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19K07154
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
平居 貴生 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (80389072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 健一 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (70635135) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 時計遺伝子 / 天然物 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、生体時計は基本的生命現象だけでなく、病態解明や治療の標的として注目されている。すなわち、生物時計システムの異常が、飽食に伴うメタボリック・シンドローム、老齢化と関連する骨粗鬆症、糖尿病、高血圧症といった生活習慣病などの様々な慢性疾患の病因、あるいは病態進行に関与する可能性が示唆されている。 概日リズムは、Bmal1およびCLOCKなどの主要な時計構成分子によって精密に制御される。一方で、時計遺伝子の生理的意義、病態における時計遺伝子の関与に関しては十分に解明されたとは言えないのが現状である。また、生物時計システムに作用する薬物のスクリーニングには適切な実験系を構築することが非常に重要である。したがって、本年度は、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞における生物時計システムの新規機能を明らかにする目的で、脂肪細胞分化制御におけるNuclear Factor, Interleukin 3 Regulated/E4 Promoter-Binding Protein(Nfil3/E4BP4)の機能解析と生物時計システムに作用する薬物探索に向けた実験系の構築を試みた。本年度の研究より、時計遺伝子Nfil3/E4BP4は、脂肪細胞の細胞分化において重要な役割を果たす可能性が示唆された。また、HEK293細胞を利用したスクリーニング系のセットアップが完了したので、150 種類の生薬エキスライブラリーを用いてRev-erbに作用する天然アゴニストの探索を試みた結果、HEK293細胞においてBmal1プロモーター活性とBMAL1 mRNA発現を減少させる生薬エキスを2種類同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪組織は白色脂肪組織と褐色脂肪組織に大別されるが、白色脂肪組織は、アディポネクチンといった生理活性物質を分泌し、代謝等を制御する主要な内分泌臓器である。一方、褐色脂肪組織は熱産生を行い、体温の維持や代謝の制御に寄与する。白色脂肪細胞における時計遺伝子Nfil3の機能解析のために、間葉系幹細胞C3H10T1/2細胞に対して、siRNA法を用いてNfil3をノックダウンした後、Oil Red O染色による脂肪蓄積能の測定および、定量的リアルタイムPCR法による脂肪細胞関連遺伝子の変動を測定し、細胞分化へ影響について検討した。その結果、siRNA法を用いてNfil3をノックダウンしたC3H10T1/2細胞では、コントロール細胞に比して、アディポネクチン遺伝子(Adipoq)、fatty acid binding protein 4(Fabp4)の有意な減少が確認された。また、Nfil3ノックアウトマウスから調製した脂肪前駆細胞を白色脂肪細胞分化条件下で培養した場合、対照細胞に比してAdipoq、Fabp4遺伝子の有意な減少が確認された。したがって、時計遺伝子Nfil3は、脂肪細胞の細胞分化において重要な役割を果たす可能性が示唆された。また、150 種類の生薬エキスライブラリーを用いてRev-erbに作用する天然アゴニストの探索を試みた結果、HEK293細胞においてBmal1プロモーター活性とBMAL1 mRNA発現を減少させる生薬エキスを2種類同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果より、時計遺伝子Nfil3が脂肪細胞分化に重要な役割を果たすことが明らかとなった。さらに、核内受容体Rev-erbの合成アゴニストGSK4112によって、褐色脂肪細胞におけるNfil3発現低下に伴うUcp-1の有意な発現増加を確認した。時計遺伝子Nfil3/E4BP4はT細胞の分化決定に必須な転写因子であることが報告されるなど、核内受容体Rev-erbの標的分子の一つとして同定されているが、今後は(1)脂肪組織における脂肪細胞の細胞分化制御機構における時計遺伝子Nfil3の詳細な役割を明らかにすると同時に、(2)漢方方剤繁用生薬、薬用植物抽出エキスを用いたスクローニングによって、Nfil3の発現に対して抑制的に作用するような天然物の探索を試みることによって、時計遺伝子を標的とした肥満や糖尿病改善薬の創出の可能性について検討する予定である。特に、BMAL1 mRNA発現に著名な影響を及ぼす生薬エキスに関しては、その成分精査と薬理作用について詳細に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
従来、Rev-erbに作用する天然物の探索には市販の試薬を用いて行う予定であったが、安価な自作の試薬を用いた場合、明らかに遺伝子導入効率が良い結果を得たので、高額の試薬を購入する必要が無くなった。また、予定より効率良くスクリーニングの結果が得られたことから、大幅に経費を節約する結果となった。これら次年度使用額に関しては、2019年度に十分に実施できなかった生物時計システムに作用する天然物の同定とその薬理作用の解析に用いる薬剤購入費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)