2019 Fiscal Year Research-status Report
リーシュマニア症の新たな治療薬「熱帯紫雲膏」開発にむけた基礎的研究
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19K07155
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
安元 加奈未 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (70412393)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リーシュマニア症 / 薬用植物 / 天然活性物質 / 熱帯感染症 / 抗リーシュマニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、現地の植物資源を用いて安価な「熱帯紫雲膏」を開発し、途上国の生活向上という社会実装を見据えた研究展開を行うための基礎研究として、新たなシーズ探索とともに、活性キノン系化合物群のリーシュマニア原虫に対する薬理作用を嫌気的ミトコンドリア呼吸鎖阻害によるアポトーシス誘導の有無や酸化ストレスの検討によって明らかにしていくものである。 まず、既知活性化合物(キノン系化合物)の原虫アポトーシス誘導活性の検討を行うべく、キノン系化合物群の嫌気的ミトコンドリア呼吸鎖阻害によるアポトーシス誘導の有無を検討した。アポトーシスは、ミトコンドリア膜電位の低下により開始したと見なされ、指標とすることができるため、脂溶性カチオン蛍光プローブJC-1によりアポトーシスを起こした細胞を調べることができる。試薬条件等を検討するため、研究代表者が有する抗リーシュマニア活性キノン含有植物由来エキス、ナフトキノン誘導体でマラリア治療薬でもあるatovaquone、およびミトコンドリア電子伝達系複合体IIIの阻害剤である抗生物質ascochlorinについて検討を行った。これと並行して、熱帯領域であるミャンマーに生育する植物から、さらなる抗リーシュマニア活性を有する化学成分を探索することを目的として一次スクリーニングで活性の見られた植物メタノールエキスから、イソマツ科植物およびマメ科植物エキスについて各種クロマトグラフィー等の化学的分離手法を用いて抗リーシュマニア活性成分の探索を行った。その結果、これまでに計16種の化合物を単離した。これらについて、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量分析等の機器分析により、それぞれの化学構造を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画において、これまでに選定したミャンマー産植物エキスの化学成分の分離精製および構造決定は順調に進行している。また「熱帯紫雲膏」開発の基礎研究として、新たな評価系である、嫌気的ミトコンドリア呼吸鎖阻害によるアポトーシス誘導の有無を検討するべく、既知の抗リーシュマニア活性物質(キノン系化合物群)を含む植物エキスや抗マラリア活性を有する化合物を用いて、ミトコンドリア膜電位差を検討した。以上のことから、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、活性化合物を見出すべく分離に着手している植物エキスについては、引き続き単離精製を行い、活性物質の探索を行う。得られた化合物については、詳細な改良MTT法による抗リーシュマニア活性を検討するとともに、宿主細胞モデルであるRAW264.7についても影響を調べる。 他方、ミトコンドリア膜電位差によるリーシュマニア原虫のアポトーシスを、研究代表者が有する天然由来抗リーシュマニア活性物質および生理活性市販試薬等、より多くの化合物で検討する。また、抗リーシュマニア活性物質(キノン系化合物群)を含む植物エキスを紫根の代替として、紫雲膏の調整方法に基づいた場合の成分定量を行い、その含有量とリーシュマニア原虫に対する活性について考察する。
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Causes of Carryover |
(理由)2019年度は、植物エキスから活性化合物の分離精製に重点を置き、当初予定していた生理活性試験に使用する試薬類の購入が少なかったため次年度使用額が生じた。一部の試薬については海外での受注生産であったため購入が困難であった。2020年度以降に行うミトコンドリア膜電位差試験を多様な生理活性物質で検討するため、試薬の購入費用として予算の一部を次年度へ充当した。 (使用計画)細胞傷害性アッセイおよびミトコンドリア膜電位差の検討実験に使用する生理活性物質、使用器具類および試験試薬購入に使用する。成分探索研究においては、試薬、精製用分析・分取用HPLCカラム、および周辺機器を導入し、化合物の単離精製を行う。
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