2019 Fiscal Year Research-status Report
CYP3A5遺伝子情報に基づく薬物療法の個別化に関する基盤研究
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19K07159
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 カオル 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (30255864)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CYP3A5 / ヒト化動物 / 遺伝子多型 / 小腸代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
Cytochrome P450 3A5 (CYP3A5) には遺伝子多型が存在し、CYP3A5活性を持たない個体 (CYP3A5欠損者)が存在する。CYP3A5で代謝されるほとんどの薬物はCYP3A4により代謝されるため、CYP3A5遺伝子多型による薬物動態への影響は当該薬物の代謝におけるCYP3A5の寄与率に依存する。現在のところ、小腸などの肝外臓器での代謝を含むヒトin vivoにおける薬物体内動態にCYP3A5が寄与するかは臨床研究以外に方法がない。本研究の目的は、申請者らが開発したCYP3A5ヒト化モデル動物を用いてCYP3A5 遺伝子多型による薬物体内動態への影響を明らかにし、CYP3A5遺伝子情報に基づいた薬物療法の個別化を実現するための基盤を構築することである。R1年度は、CYP3A5欠損マウスとCYP3A5発現マウスにCYP3A基質薬であるトリアゾラムを経口投与し、門脈中濃度を測定することにより小腸代謝におけるCYP3A5の寄与を検証した。トリアゾラム投与後の門脈血におけるトリアゾラムに対するα位水酸化代謝物と4位水酸化代謝物の濃度比はいずれもCYP3A5発現マウスにおいて高値を示したことから、in vivoにおいて小腸CYP3A5がトリアゾラム代謝に関与することが示唆された。さらに、CYP3A5の有無によるCYP3A阻害作用への影響を解析するための基礎情報を取得するため、8種のアゾール系抗真菌薬についてCYP3A4とCYP3A5に対する阻害作用を比較した。その結果、CYP3A4とCYP3A5に対する阻害作用がほぼ等しい薬物とCYP3A5に対する阻害作用が極端に弱い薬物が認められた。これらの結果より、CYP3A5欠損マウスとCYP3A5発現マウスを比較することにより、CYP3A5の有無による薬物体内動態および相互作用の比較解析が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の下記3項目のうち、1)2)の2項目に着手し、計画通りの成果を得ている。 1)CYP3A5の有無によるCYP3A基質のクリアランスへの影響、2)CYP3A5の有無によるCYP3A阻害作用への影響、3)CYP3A5の有無によるCYP3A誘導作用への影響 1)については、基質薬投与後の門脈中濃度からCYP3A5の有無により小腸代謝に差異が認められることを明らかにした。2)については、in vitroでの検討によりCYP3A5の有無によるCYP3A阻害作用への影響を検討するうえで有益な薬物を抽出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
R1年度の研究がほぼ計画通り進行したため、R2年度は、CYP3A5の有無によるCYP3A基質のクリアランスへの影響およびCYP3A阻害作用への影響に関する検討を下記4項目について実施する。 1)CYP3A5欠損マウスとCYP3A5発現マウスの肝および小腸ミクロソーム画分を調製し、in vitroクリアランスにおけるCYP3A5の寄与を算出する。 2)CYP3A5欠損マウスとCYP3A5発現マウスにCYP3A基質を投与し、門脈中薬物濃度およびクリアランスの差異からin vivoにおけるCYP3A5の寄与を算出する。 3)CYP3A5欠損マウスとCYP3A5発現マウスへCYP3A阻害剤を前処置した後、CYP3A基質を投与し、CYP3A基質の門脈中薬物濃度およびクリアランスを比較する。
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