2019 Fiscal Year Research-status Report
網膜への薬物送達実現に向けた血液網膜関門薬物排出輸送能のex vivo評価法開発
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19K07160
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
赤沼 伸乙 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (30467089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 雄基 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (00778467)
細谷 健一 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (70301033)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血液網膜関門 / 網膜毛細血管 / トランスポーター / P-糖タンパク質 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が独自に開発した"ex vivo内側血液網膜関門薬物輸送評価系"の、網膜への薬物デリバリーを実現する上での有用性を実証することを目的としている。 内側血液網膜関門の実体である網膜毛細血管について新鮮な状態での単離を試みたところ、4匹のラットから一度の解析を行うにあたり必要な網膜毛細血管画分を調製することが可能となった。本画分を用いたmRNA発現解析を行ったところ、網膜毛細血管内皮細胞マーカー分子発現が示唆され、一方で神経細胞・グリア細胞マーカー分子のmRNA発現は示されなかった。従って、調製した画分において網膜毛細血管が豊富に含まれていることが示唆された。 本画分を用い、蛍光団が導入されたトランスポーター基質を用いた輸送イメージング解析を行った。なお、排出トランスポーターの一つであるP-糖タンパク質に対する基質として、cyclosporin Aを蛍光団であるNBDと結合させたNBD-cyclosporin Aを独自に合成し、P-糖タンパク質介在輸送機能を示すことを、単分子発現系を用いた解析を通じて確認した後に、上記イメージング解析に供した。単離網膜毛細血管を用いた解析において、上記P-糖タンパク質を含め、有機カチオン性化合物および有機アニオン性化合物の網膜からの排出を担う輸送担体について、網膜から循環血液への方向性を持った輸送機能が示された。 以上の結果を総合すると、我々が確立した方法にて、新鮮網膜毛細血管の単離が可能であること、そしてその単離した網膜毛細血管において薬物輸送担体の機能が良好に保持されていることが示唆された。これら当該年度に得られた研究成果は日本薬物動態学会第34回年会などの学術集会にて成果を発表し、現在、学術論文としての成果公表の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の計画において、予定していた(A) 単離法にて調製した画分における網膜毛細血管純度の評価と、(B) 網膜毛細血管における薬物排出輸送担体機能の評価、の2点について、順調に遂行された。また、これら解析を通じ、調製した画分が内側血液網膜関門の輸送系を定性的に評価する上で高い有用性が示された。本研究結果は、本計画実施前に予備的に得られた成果から予想されたものと同様であり、申請時に計画していた研究成果発表を予定通りに行うことが出来た。学術論文の準備もまた順調であり、本申請課題の社会的還元も計画通り遂行する見通しが立っている。以上のことから、解析・成果発表について、申請時において計画された内容は順調に遂行されたものと判断される。
2020年度(令和2年度)においては、確立したex vivo解析系の既存in vitro細胞培養系を用いた解析と比しての定性・定量的優位性について検証をすすめる予定である。本検証に向けたin vivo血液網膜関門輸送解析についても準備は完了しており、今後の研究計画も順調に進行するものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度実施を計画していた、ex vivo手法のin vivo網膜薬物移行性評価系の有用性実証に、取り組む予定である。確立したex vivo手法のP-糖タンパク質を含めた排出輸送担体に対する基質の輸送について速度論的評価を試み、in vivo網膜移行性を定量的な評価と比較する。さらに、in vitro内側血液網膜関門モデル細胞であるTR-iBRB2細胞における同基質輸送も並べて比較し、本ex vivo手法の有用性を示す。なお、in vitro解析系としてTR-iBRB2細胞単独だけではなく、研究代表者は新たなin vitroツールとして本課題を通じて、3次元的多細胞性in vitroツールを構築しており、本ex vivoと本新規in vitroツールそれぞれについて、in vivoにおける薬物の網膜移行性を予測する上での優位性と限界を示し、「網膜への薬物送達を実現するための開発ツールの使い分け」を提示していく予定である。 また、本年度から2021年度にかけて、病態時における血液網膜関門透過を予測する上での本ex vivo解析系の有用性を検証する予定であり、糖尿病モデルラットを活用したin vivoおよびex vivo解析も、前述の解析について目途が立ち次第取り掛かる予定である。なお、糖尿病ラットについて、すでに血糖値の上昇などの生理学的変化が示されるラットについて、作出に成功している。そのため、速やかな解析の実施に向けた準備はすでに完了している。
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Causes of Carryover |
本課題申請段階において、輸送解析に必要と思われた実験動物(ラット)について8匹/回と想定していた (1回の輸送解析において3-4条件の設定が可能)。本課題採択後に、網膜毛細血管単離法を改めて見直し、回収量の改善などを試みた結果、必要動物匹数として4匹/回にて、本解析に必要な網膜毛細血管の単離が可能となった。そのため、購入予定の動物数についての削減が研究期間内に実現した。また、蛍光標識トランスポーター基質の合成に関しても、高収量であったことから、必要とする合成試薬の削減に成功した。以上の点にて削減された経費を活用するため、今後実施予定のin vitroおよびin vivo解析の準備を2019年度末から行っており、その結果として次年度使用額が生じてしまった。 この次年度使用額は、前述のように2020年度に計画している解析の準備および実施に活用する予定である。
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Research Products
(9 results)