2019 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢に影響する薬剤の服用による食物抗原の吸収とアレルギー発症への影響解析
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19K07164
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
横大路 智治 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (70389120)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 抗菌薬 / 感作 / 消化管吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、これまでにアスピリンを含む非ステロイド性抗炎症薬の服用が食物アレルゲンの吸収を増加させるとともに経口感作を助長することを明らかにしている。この結果は、薬剤の服用が食物アレルゲンに対する感作を助長し、食物アレルギーの発症を増加させる可能性があることを示すものである。本研究では、腸内細菌叢の分布に変化をおよぼす薬剤の服用が食物抗原タンパク質の消化管透過性や抗原の感作に与える影響を分子・細胞レベルで明らかにすることを目的とする。本年度は、ヒトで腸内細菌叢の変動を惹起すると報告されているバンコマイシンを用いて、抗菌薬の投与が腸内細菌叢をどのように変動させるのかをラットモデルで解析した。 BNラットにバンコマイシンを1日1回連日、強制経口投与した場合、投与開始8週間目にClostridiumの16S rDNA量は開始前よりも減少傾向を示した。一方、E.coliやEnterococcus、Lactobachillus、Bacteroidesの16S rDNAの量には顕著な変動が認められなかった。さらに、全菌種を対象として16S rDNA量を測定した結果、バンコマイシン投与後8週間目のDNA量は投与前よりも約8%減少した。このとき、前述した菌種の16S rDNAの量は溶媒のみを投与した群と抗菌薬投与群で有意な差が認められなかった。また、卵白アレルゲンである卵白アルブミン (OVA) の皮下感作によるOVA特異IgE抗体の産生は抗菌薬の有無により有意な差が認められなかった。バンコマイシンの投与により細菌の16S rDNA量やOVAの感作に大きな変動が見られなかった要因として、バンコマイシンの投与法に問題があると考えられる。次年度ではバンコマイシンの消化管内濃度が維持できる飲水モデルを使用して、OVAの感作に及ぼす抗菌薬の影響を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バンコマイシンの強制経口投与による腸内細菌叢の変動が顕著に認められなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
バンコマイシンの投与法と用量を再検討するとともに、バンコマイシン以外の抗菌薬の影響についても解析する予定である。また、抗原の透過性に対する抗菌薬の影響についても解析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)見積もりに差が生じたため (使用計画)次年度の助成分と合算して使用する
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Research Products
(5 results)