2020 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤による薬物トランスポーターの発現変動~メカニズムと薬物体内動態への影響~
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19K07173
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
秋好 健志 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (50399143)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イリノテカン / SN-38 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、抗がん剤としてイリノテカンおよびその活性代謝物 SN-38 を用いて、ヒト肝臓がん由来培養細胞株 (HepG2) およびヒト大腸がん由来細胞株 (LS-180, Caco-2) に、各種条件下にて曝露した結果、複数のトランスポーターの遺伝子発現量が変動している可能性を見出した。具体的には、72 時間までイリノテカンおよびその活性代謝物 SN-38 を連続曝露、または、1 日当たり 1 時間の 3 日間の間欠曝露のいずれにおいても、BCRP 遺伝子の発現の上昇が確認された。なかでも 72 時間連続曝露によりその影響は顕著に大きく、最大約 40 倍以上の変動が認められた。また、Pept 1 遺伝子などにおいても変動が認められた。具体的な変動メカニズムについては現状では不明であるが、今後、この点についても検討を進める予定である。また、これら変動の認められた遺伝子群において当該蛋白質の発現量がどの程度変動しているのかについて、現在、動物(主にラット)および上記の各種細胞株での曝露実験の準備を進めている段階であり、各トランスポータータンパク質の発現量についてウェスタンブロッティング法および、絶対発現量を LC-MS/MS による QTAP 法により定量することで、抗がん剤曝露の影響を明らかにする。また、現在、各種トランスポーターの局在部位である細胞膜蛋白質の回収法の改善およびその後の蛋白消化法についても、より高収率で安定した方法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今般のコロナ禍の影響により、当該年度は、研究が一時中断する事態に陥った。現在、鋭意挽回すべく研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、抗がん剤曝露ラットおよび各種がん細胞株を用いて、各種トランスポーターの絶対発現量をLC-MS/MSにより定量する。また、細胞膜画分の回収率の改善方法の検討ならびに、蛋白消化方法の改善についても検討を進めることで、より高収率で安定した、トランスポーター発現量定量法を確立する。 一方で、各種抗がん剤曝露下での遺伝子発現調節機構についても、後天的制御機構、すなわちユビキチン化の亢進、プロテアソームまたはリソソーム分解の寄与とその活性の変動、合成亢進の有無などについて検討を進めることで、抗がん剤曝露がおよぼす蛋白質発現量の変動機構の解明を進める。
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Causes of Carryover |
今般のコロナ禍の影響により一時的に研究を中断した。このことによる未使用分は、主に物品費として研究に使用する。
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Research Products
(1 results)