2022 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん剤による薬物トランスポーターの発現変動~メカニズムと薬物体内動態への影響~
Project/Area Number |
19K07173
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
秋好 健志 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (50399143)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トランスポーター / 抗がん剤曝露 / 消化管障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抗がん剤による薬物トランスポーターの発現変動について検討を行ってきた。具体的には、ラットを用いて代表的な抗がん剤の一つであるイリノテカンを尾静脈から連続投与し、抗がん剤曝露モデルとした。当該モデルでは、実臨床と同様のイリノテカンの副作用、すなわち、重篤な消化管障害や下痢症状を呈する。この消化管障害モデルラットにおいては、これまでに一部の薬物輸送トランスポータの発現量が変動することが報告されている。そこで、本研究では、薬物の消化管吸収および肝臓への取り込みと排泄、さらには腎臓からの薬物排泄を担う様々なトランスポーター、ならびに、それら臓器において内因性物質の輸送を担う各種トランスポーターの発現量に対するイリノテカン曝露の影響を、定量的プロテオミクス解析により網羅的に明らかにすることを目的とした。 方法は、上述の通り作出した消化管障害モデルラットから、小腸の上、中、下部、肝臓および腎臓組織を摘出し、各組織の細胞膜画分を分離精製した。それを蛋白消化によりペプチド断片を調製し、各トランスポーター特異的ペプチドをLC-MSMSにより定量した。 結果として、P糖蛋白質の発現量は小腸において数倍に上昇した一方、腎臓における影響は限定的であった。さらに、胆汁酸(内因性物質)の再吸収輸送を担うAsbtタンパク質は、小腸下部において発現量が低下した。 以上より、イリノテカン曝露により薬物輸送に寄与するトランスポーターに加え、内因性物質の輸送を担うトランスポーターについても、その発現量が大きく変動していることが明らかとなり、これらの基質(薬)の体内動態変動が危惧された。
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Research Products
(1 results)