2020 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の効果的回復を目指した薬剤師のスティグマ是正教育プログラムの開発と実践
Project/Area Number |
19K07178
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
亀井 浩行 名城大学, 薬学部, 教授 (60345593)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半谷 眞七子 名城大学, 薬学部, 准教授 (40298568)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | スティグマ / 統合失調症 / 保険薬局薬剤師 / 教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体計画は、1) 統合失調症患者への服薬支援の障害となる薬剤師のスティグマの現状を明らかにする。2)その結果をもとにスティグマを評価する指標を作成する。3) この指標を用いて、「統合失調症患者に対する薬剤師のスティグマを是正し、適切な服薬支援を行うための薬剤師の患者参加型教育プログラム」を開発することである。 当該年度においては、保険薬局薬剤師(計115名)を対象に患者との対話を用いた薬剤師教育プログラムを2回に分けて実施した。このプログラムでは、講義群56名(統合失調症に関する60分の講義のみを受講)、患者との対話群59名(講義に加え、グループワーク70分及び統合失調症患者との対話60分を行う)にランダムに割り付け、その前後で新規スティグマの評価尺度を用いて、教育プログラムの効果を評価した。 その結果、対象者の平均年齢は37.3±9.5歳、男性67名、女性48名、平均薬剤師経験年数は11.1±8.2年であり、対話群と講義群の背景に有意な差は認められなかった。教育プログラム実施前後におけるスティグマ評価尺度の全体スコア及び4因子(第I~IV)のスコアの改善率はそれぞれ、対話群:15.5%、18.3%、23.0%、5.0%、1.0%、講義群:5.2%、7.1%、4.5%、6.7%、0%であった。その中で対話群が、講義群と比較して有意に改善が認められたスコアは、スティグマ評価尺度の全体スコア、第 I因子(薬剤師としての社会的距離)及び第 II因子(統合失調症患者に対する認識・態度)のスコアであった。以上の結果より、患者との対話と講義を組み合わせた本教育プログラムが、保険薬局薬剤師の統合失調症患者に対するスティグマの改善に有用であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を実施するに当たり、本研究計画とその実施について、既に学内の人を対象とする倫理審査委員会の承認を得ていたこと、統合失調症と薬局薬剤師に特化したスティグマ(偏見、差別)の評価尺度を我々の先行研究や文献などから原案を作成していたこと、研究対象者である統合失調症患者と薬局薬剤師の抽出の準備ができていたことから、新規スティグマ評価尺度の原案を早期に作成し、保険薬局薬剤師115名を対象に統合失調症患者との対話を活用した教育プログラムを2回に分けて実施することができ、その後の解析も順調に行うことができた。 一方、新型コロナ禍の感染拡大により、本研究の検証や国際学会での報告などが実施できなかったことから、これらは、次年度以降に感染状況を考慮しながら実施する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、国外での学会発表や再度、薬剤師教育プログラムを予定しているが、新型コロナ感染症拡大の影響で、海外の学会発表は中止となり、薬剤師教育プログラムの開催の目途も立っていない。前年度のデータ解析を詳細に見直し、海外の学術雑誌への論文投稿等を実施し、研究成果を国内外に発信していく予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナ感染拡大の影響により、予定していた国際学会(シドニー市)が中止となり、発表が実施できなかったことが挙げられる。翌年度分の使用計画は新型コロナ感染拡大の影響にもよるが、研究代表者自身が大会長として自国で開催する第21回アジア臨床薬学カンファレンス(名古屋市)にて発表を計画している。
|