2019 Fiscal Year Research-status Report
造血幹細胞移植における赤血球数変動を考慮したタクロリムスの全血中濃度再評価
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19K07180
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
杉岡 信幸 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (40418934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 恵造 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30454474)
芝田 信人 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (60319449)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タクロリムス / 母集団薬物動態解析 / 造血幹細胞移植 / 超臨界抽出-クロマトグラフィー/質量分析システム / 血中濃度 / TDM |
Outline of Annual Research Achievements |
タクロリムスを使用した造血幹細胞移植(HSCT)患者99名、1863点の全血中濃度データを用いて、母集団薬物動態解析を行い、推定された母集団薬物動態パラメータは、分布容積が99.4 ± 10.0 L、消失速度定数は0.028 ± 0.003 hr-1であり、バリデーションの結果も良好であった。共変量としてはヘモグロビンが採択され、骨髄破壊を行う移植前処置の種類(抗がん剤、放射線)、移植ドナーソース(臍帯血、末梢血、骨髄)は共変量に採択されなかった。このことはHSCT全般においても、赤血球数の変動が血中動態に大きな影響を与えることを示し、このことはタクロリムスの血中分布が赤血球数によって影響を受けることに起因し、全血中濃度は組織移行にかかわる血漿中濃度を反映していないことが考えられる。後述する基礎実験を遂行するため、超臨界流体質量分析法を用いた血漿中タクロリムス濃度高感度分析法の開発を行った。0.005-5 ng/mLの範囲で、直線性、再現性ともに良好な結果が得られ、目標全血中濃度10-20 ng/mLから推定される血漿中濃度0.5-1.0 ng/mLを十分に網羅できた。上記分析法を用い、全血中濃度と赤血球数から血漿中濃度を予測するための赤血球への結合における非線形性を考慮した生理学的モデルを次式のように定義し、最大結合許容濃度Bmaxと親和定数Kdを求めるべく予備実験を行った。 Cwb=Cp・(1-Ht)+Crbc・Ht Crbc=f・Cp+Bmax・f・Cp/(Kd+f・Cp) ただし、Cwb:全血中濃度、Ht:ヘマトクリット値、Crbc:赤血球中濃度、Cp:血漿中濃度、f:血漿中蛋白遊離型分率である。ラット血液を用いたin vitroにおける実測値を上記モデルに当てはめ、各パラメータの算出が可能であることを確認しているが、確定には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
“(Step 1) 超臨界流体質量分析法(超臨界MS/MS)による全血中・血漿中・血漿中遊離型TAC濃度測定法の確立“に関しては、順調に進展している。血漿中遊離型濃度測定は未だ取り組むには至っていない。“(Step 2) 赤血球分画を含むTAC生理学的薬物動態モデルの構築 (Step 2-2:概念検証) (Step 2-3:ヒトへの外挿)”に関して、ラットのおけるモデルの構築と検証に関しては予備実験の段階であるが、概ね良好な結果を得ている。ヒト血液を用いた同様の実験に関しては実施していない。“(Step 3) TAC生理学的薬物動態モデルのヒトへの外挿”に関しては、現在100名以上の造血幹細胞移植患者のデータを取得している。このデータを用いての母集団薬物動態解析では、先行研究と同様に赤血球数が全血中濃度に対する共変量であることを証明している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度開発した超臨界MS/MSによるタクロリムス超高感度分析法の更なる感度・信頼性向上を行うとともに、以下の計画を実行する。 赤血球分画を含む生理学的薬物動態モデルの構築:臨床における血漿中・血漿中遊離型タクロリムス濃度は入手不能であるため、それを推定する手法が必要となる。概略としては、基礎実験で概念を実証しヒトに外挿するものである。今年度に行った予備実験を参考にし、正常およびヘマトクリット(Ht)値を低下させたモデルラットにタクロリムスを投与し、Ht値および全血中・血漿中・血漿中遊離型TAC濃度を実測する。得られたHt値を含む全ての実測値を満たすTAC生理学的薬物動態モデルを構築し、blood to plasma ratio (BP ratio)を含むパラメータを算出する。ラット全血試料を用いて任意のHt値を持つ擬似血液を作製し、当該in vitro実験で得られるタンパク結合率およびBP ratioを用いてin vivoでのパラメータの推定が可能な事を実証する(広義のin vitro-in vivo correlationの実証)。ヒト全血試料で同様のin vitro実験を行い、生理学的薬物動態モデルのパラメータを算出し、ヒトにおける当該モデルを構築する。 生理学的薬物動態モデルのヒトへの外挿:造血幹細胞移植患者において、移植後の全血中濃度・赤血球数の指標を含む臨床検査値および患者背景等の臨床データを収集する。Step 2で構築したヒトにおけるTAC生理学的薬物動態モデルを用い、非線形混合効果モデルによる母集団薬物動態解析法によるパラメータの推定および血漿中遊離型TAC濃度の推定を行う。推定された血漿中遊離型TAC濃度と、移植の成否および有害事象・GVHD発症の有無等のTACの薬理効果をlogistic 解析等にて行い、血漿中遊離型TACとして有効濃度域の再考ならびに全血中濃度としての補正方法を提案し、血漿中・赤血球分画中分布も考慮した全血中TAC濃度モニタリングによる投与設計を可能とする。
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Causes of Carryover |
学会中止により出張費が執行できなかったため。 次年度においては、出張費として計画している。
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