2020 Fiscal Year Research-status Report
造血幹細胞移植における赤血球数変動を考慮したタクロリムスの全血中濃度再評価
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19K07180
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
杉岡 信幸 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (40418934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 恵造 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30454474)
芝田 信人 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (60319449)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タクロリムス / 母集団薬物動態解析 / 造血幹細胞移植 / 超臨界抽出-クロマトグラフィー/質量分析システム / 血中濃度 / TDM |
Outline of Annual Research Achievements |
タクロリムスを使用した造血幹細胞移植(HSCT)患者91名の全血中濃度データを用いて、母集団薬物動態解析を論文発表に向けて引き続き、データ検証と解析検討を繰り返し実施し、現在のところ、推定された母集団薬物動態パラメータは、分布容積が100 L、消失速度定数は0.027 hr-1であり、バリデーションの結果も良好である。共変量としてはヘモグロビンが採択され、骨髄破壊を行う移植前処置の種類(抗がん剤、放射線)、移植ドナーソース(臍帯血、末梢血、骨髄)は共変量に採択されないことは一貫している。このことはHSCT全般においても、赤血球数の変動が血中動態に大きな影響を与えることを示した。また、本解析症例の中で、計画書に記載した臍帯血移植患者における検討結果を学術誌に発表した。(J Clin Pharm Ther. 2021 Feb;46(1):190-197) 後基礎実験を遂行するために、昨年度来開発した超臨界流体質量分析法を用いた血漿中タクロリムス濃度高感度分析法を用い、全血中濃度と赤血球数から血漿中濃度を予測するための赤血球への結合における非線形性を考慮した生理学的モデルを次式のように定義し、最大結合許容濃度Bmaxと親和定数Kdを求めるべく実験を継続して行った。 Cwb=Cp・(1-Ht)+Crbc・Ht Crbc=f・Cp+Bmax・f・Cp/(Kd+f・Cp) ただし、Cwb:全血中濃度、Ht:ヘマトクリット値、Crbc:赤血球中濃度、Cp:血漿中濃度、f:血漿中蛋白遊離型分率である。ラット血液を用いたin vitroにおける実測値を上記モデルに当てはめ、Bmax = 44.4 ± 8.3 (S.E.)、Kd = 0.08 ± 0.02 (S.E.)という結果を得た。現在 in vivo での検証を上記の血漿中タクロリムス濃度高感度分析法を用いて実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は新型コロナウイルスによる大学研究室閉鎖の影響を受け、実験はあまり進展していない。臨床データ取得・解析も共同研究先(神戸医療センター中央市民病院)の新型コロナウイルス対策のため、訪問が制限されており、同様にあまり進展していない。 “(Step 1) 超臨界流体質量分析法(超臨界MS/MS)による全血中・血漿中・血漿中遊離型TAC濃度測定法の確立“に関しては、前年度確立はしているが、さらなる改善は進展していない。なお、血漿中遊離型濃度測定は未だ取り組むには至っていない。“(Step 2) 赤血球分画を含むTAC生理学的薬物動態モデルの構築 (Step 2-2:概念検証) (Step 2-3:ヒトへの外挿)”に関して、ラットのおけるモデルの構築と検証に関してはパラメータの推定に成功し、概ね良好な結果を得ている。ヒト血液を用いた同様の実験に関しては実施していない。“(Step 3) TAC生理学的薬物動態モデルのヒトへの外挿”に関しては、現在91名の造血幹細胞移植患者のデータを用いての母集団薬物動態解析では、先行研究(本年度論文発表(J Clin Pharm Ther. 2021 Feb;46(1):190-197)と同様に赤血球数が主たる全血中濃度に対する共変量であることを証明している。本研究成果は、以下の学会で発表した。 造血幹細胞移植患者におけるタクロリムスの母集団薬物動態解析及び移植レジメンの影響評価: 〇奥 遥乃、吉田早希、福島恵造、入江 慶、平野達也、室井延之、池末裕明、橋田 亨、杉岡信幸, 第141年会 日本薬学会 2021年 3月
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Strategy for Future Research Activity |
前年度開発した超臨界流体質量分析法によるタクロリムス超高感度分析法の更なる感度・信頼性向上を行うとともに、以下の計画を実行する。(本年度に実行できなかったものを含む) 赤血球分画を含む生理学的薬物動態モデルの構築:臨床における血漿中・血漿中遊離型タクロリムス濃度は入手不能であるため、それを推定する手法が必要となる。概略としては、基礎実験で概念を実証しヒトに外挿するものである。今年度に行ったin vitroの実験結果(ラット全血試料を用いて任意のHt値を持つ擬似血液を作製し、当該in vitro実験で得られるタンパク結合率およびBP ratioを用いてin vivoでのパラメータの推定が可能な事を実証する)。をもとに、正常およびヘマトクリット(Ht)値を低下させたモデルラットにタクロリムスを投与し、Ht値および全血中・血漿中・血漿中遊離型TAC濃度を実測する。得られたHt値を含む全ての実測値を満たすTAC生理学的薬物動態モデルを構築し、blood to plasma ratio (BP ratio)を含むパラメータを算出する。ヒト全血試料で同様のin vitro実験を行い、生理学的薬物動態モデルのパラメータを算出し、ヒトにおける当該モデルを構築する。 生理学的薬物動態モデルのヒトへの外挿:造血幹細胞移植患者において、移植後の全血中濃度・赤血球数の指標を含む臨床検査値および患者背景等の臨床データを収集する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる大学研究室閉鎖の影響による実験遂行の遅延 次年度使用額は未遂行の実験、学会論文発表等に用いる。
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[Journal Article] Population pharmacokinetics of tacrolimus in umbilical cord blood transplant patients focusing on the variation in red blood cell counts2021
Author(s)
Yoshida S, Fujimoto A, Fukushima K, Ando M, Irie K, Hirano T, Miyasaka M, Shimomura Y, Ishikawa T, Ikesue H, Muroi N, Hashida T, Sugioka N.
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Journal Title
J Clin Pharm Ther .
Volume: 46
Pages: 190-197
DOI
Peer Reviewed
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