2020 Fiscal Year Research-status Report
全身性エリテマトーデスにおけるマイクロパーティクルの生理学的意義の解明
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19K07194
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
清水 太郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 特任助教 (30749388)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / 自己免疫疾患 / マイクロパーティクル / 自己抗原 / プロテオーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、全身性エリテマトーデス(SLE)病態時に分泌される細胞外小胞(マイクロパーティクル)がSLEの発症・進行に及ぼす影響およびそのメカニズムを明らかにすることを最終目標とする。SLEは自己抗体の産生を特徴とし、全身性の慢性炎症を引き起こす自己免疫疾患である。またマイクロパーティクルは親細胞の核酸を伴って形成、分泌される内因性のDNA含有微粒子であることから、SLE病態時には生体において速やかに排除されるべきマイクロパーティクルが何らかの原因により生体内に蓄積し、自己抗原として機能していると考えた。当該年度は、健常および病態時に分泌されたマイクロパーティクルに含有されるタンパク質についてプロテオーム解析を行い、それぞれのタンパク質発現量についてスクリーニングを行った。 遠心法によりマウスの血液からマイクロパーティクルを分離し、LC-MS/MSによりタンパク質を検出した。SLEモデルマウスの血液から得られたマイクロパーティクルからは、健常マウスと比べて高い免疫グロブリンタンパク質や補体系タンパク質が検出され、十分オプソニン化されていることが示唆された。また、ヒストンタンパク質やリボソームタンパク質などのSLE病態において自己抗原となりうるタンパク質も高発現していることも確認された。このことから、SLE病態において、マイクロパーティクルは十分にオプソニン化されているものの、マイクロパーティクル中の多量の自己抗原タンパクに貪食細胞が暴露され、免疫刺激されている可能性が示唆された。 さらに、辺縁帯マクロファージ特有の貪食受容体であるMARCOが顕著に高い発現を示していたことから、SLE病態における辺縁帯マクロファージによるマイクロパーティクルの高い取り込みが、MARCOの高発現によるものである可能性を示すこともできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLE病態において、血中のマイクロパーティクル上の自己抗原および抗体、補体といったオプソニン分子が増加していることを明らかにした。また、SLE病態由来のマイクロパーティクル上には、顕著なMARCO発現の増加が見られることを見出した。当初予定していたプロテオーム解析は終了しており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテオーム解析結果から、オプソニンとして働く抗体や補体がSLEモデルマウス由来のマイクロパーティクルに多数存在することが明らかになった。しかし前年度の検討から、SLEモデルマウスでは血中マイクロパーティクル数が増加していることが分かっている。今後、SLEモデルマウスの血中に存在する抗体について、その結合によってマイクロパーティクルの貪食が阻害されるのか検討し、阻害される場合はその分子を同定する。また、SLE病態時のマイクロパーティクルをマウスに投与することにより、SLE症状の発現もしくは増悪に影響が現れるのか検討する。具体的には、炎症性サイトカインの分泌、抗DNA抗体の誘導、免疫複合体の腎沈着、タンパク尿などについて検討する。さらに、ミトコンドリアを含有することによるマイクロパーティクルの抗原性の増大が注目されているため、SLEモデルマウスで特異的に増加していたサイズの大きなマイクロパーティクルの集団とミトコンドリア含有の関係を検証する。本検討を通して得られた知見を基に、最終的にはSLEの新規治療戦略を確立する。
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Research Products
(1 results)