2019 Fiscal Year Research-status Report
関節液に存在するエステラーゼを利用した変形性膝関節症の病態解析
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19K07195
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
今井 輝子 熊本大学, 薬学部, 客員教授 (70176478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エステラーゼ / 変形性膝関節症 / 関節液 / 病態解析 / ブチリルコリンエステラーゼ / パラオキソナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症などの関節疾患は高齢者が要支援や要介護になる主な原因であり、保存療法の充実が望まれる。しかしながら、変形性膝関節症の病態診断はX線画像によってグレードⅠ~Ⅳに分類するのが常法であり、関節の状態把握と病態進行を予測するための有効な診断マーカーはない。本研究では、関節内に血漿成分が移行することに着目し、治療目的で採取される関節液中の血漿由来タンパク質の機能が病態進行に伴って変動すれば、血漿由来タンパク質を病態診断パラメータとして利用できる可能性がある。本研究では、定量や機能評価の簡便性から血漿由来のエステラーゼに着目し、関節液内での活性とタンパク質としての存在状態について検討している。 血漿中に存在量が多く、その存在状態に特徴のある2種の酵素、ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)とパラオキソナーゼ1(PON1)を選択した。BChEは血漿中に4量体として存在し、PON1は高比重リポ蛋白(HDL)に結合して存在する。グレードⅠ~Ⅳの患者66名の関節液および血漿を採取し、酵素活性を測定している。その結果、BChE活性にはグレードによる相違は認め難く、PON1活性はグレードと共に増大し、グレードⅢ以降では同様の活性を保つことが認められた。BChEに比べて、HDLは分子サイズが大きく、関節液―血漿移行に制限があるためにグレードによって、両酵素の活性に相違が生じたものと考えられる。また、BChEは関節液中で4量体から2量体および単量体へ解離する現象が認められ、グレードにより解離しやすくなる傾向を認めている。しかしながら、定量に時間を要するため、まだ、少数の患者のデータである。途中経過であるが、変形性膝関節症の進行によって、血漿由来のエステラーゼの活性や存在状態が酵素の種類によって、異なる変化を示すことが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、各グレードの患者(総数66名)の関節液および血漿のサンプルを得ることができた。変形性膝関節症の初期段階では関節液が貯留する例が少ないが、グレードⅠで12名、グレードⅡで12名の患者数を得ることができた。また、最も関節液が貯留しやすいグレードⅢでで26名また、手術前のグレードⅣは16名の患者から関節液を提供いただいた。また、全員ではないが、血漿を提供いただいた例も多く、関節液と血液中の活性および酵素存在状態の比較が可能になった。現時点では関節液の活性を全て測定終了しており、予定通りの進行である。今後は同じサンプルを用いて、詳細な検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
各グレードのサンプルがある程度確保できたことから、今後はサンプル中の酵素濃度の測定、酵素活性に影響を及ぼす第二因子としての金属イオン(カルシウム、亜鉛等)の定量をおこなう。また、BChEの存在状態については、NativePAGEのバンド強度から、4量体に対する2量体と単量体の存在比を明らかにしていく。さまざまな定量データを利用して、グレード進行と関連のあるパラメータを見出していく。さらに、血漿が得られている患者において、関節液と血液の各パラメータについて比較検討し、グレード進行との関連性を検討する。
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