2020 Fiscal Year Research-status Report
関節液に存在するエステラーゼを利用した変形性膝関節症の病態解析
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19K07195
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
今井 輝子 熊本大学, 薬学部, 客員教授 (70176478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エステラーゼ / 変形性膝関節症 / 関節液 / 病態解析 / ブチリルコリンエステラーゼ / パラオキソナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症は高齢者が要支援や要介護になる原因の一つであり、その進行は数年から十数年をかけてゆっくり進行する。最も一般的な病態診断はX―線画像解析でグレードⅠからグレードⅣの4段階に分類され、グレードⅣは関節置換術を受けるレベルである。病態初期の進行を詳細に判断できれば、進行の遅延を目指した温存療法の方針が立てられるが、現時点では病態初期の進行状態を把握することは困難である。 一方、変形性膝関節症では病態初期から関節水腫の自覚症状があり、治療のために関節液は採取される。関節液は滑膜細胞で生成される成分と血管透過性の亢進に伴って血漿から移行した血漿成分によって構成される。そこで、本研究では、関節腔に貯留した血漿由来のタンパク質の活性や構造の変化を診断に応用することを考えた。関節液はプロテオグリカンやコラーゲンの存在により粘性が高く、長時間貯留することでタンパク質の活性や構造が変化する可能性がある。本研究では、関節液に移行しやすく、定量の簡便な血漿由来タンパク質として、サイズの大きなエステラーゼ、HDLの構成タンパク質であるパラオキソナーゼと4量体として存在するブチリルコリンエステラーゼを選択し、その活性と構造の変化について検討している。これまで、各グレードの患者の関節液で検討したところ、ブチリルコリンエステラーゼはその活性も会合状態も病態進行との間に相関性は認められなかった。一方、パラオキソナーゼの活性は血清ではグレード間で変化はなかったが、関節液ではグレードⅠからグレードⅡへの進行にともなって60%程度まで低下し、その後、グレードⅣまで一定の値を示した。また、この活性の低下にはパラオキソナーゼの多型は影響しなかった。今後は、パラオキソナーゼ活性の変動要因を詳細に検討し、病態初期の変動パラメーターとしての応用の可能性を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに各グレード11名から24名の関節液と血清サンプルを入手して、2種のエステラーゼの活性およびブチリルコリンエステラーゼの会合状態を全サンプルで測定した。血清中の活性は、いずれも病態の進行による変動は認められなかった。予試験では関節液中のブチリルコリンエステラーゼの会合状態はグレードによって変化したが、サンプル数を増やすことにより、会合状態も活性も変化しないことを明らかにした。一方、パラオキソナーゼについては、パラオキソナーゼが有する2種の活性、アリルエステラーゼ活性およびパラオキソナーゼ活性、の両者がグレードⅠからⅡへの病態の進行で有意に低下することを明らかにした。このように、関節液中に移行した血清タンパク質の活性が変形性膝関節症の病態初期の進行と関連することを見出すことができ、順調に進展していると言える。今後は、この変動が真に病態と関連していることを検討し、病態進行評価パラメータ―としての応用の可能性を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
提供いただいたサンプルの患者背景と活性との相関を様々な視点から解析し、病態進行と活性低下の関連性を調べる。予試験ではHDL濃度の低下による活性低下ではないことが明らかであるが、全関節液サンプルでHDL濃度を測定する。また、パラオキソナーゼ活性は酸化と関連することが報告されていることから、関節液中の酸化状態と活性との関連性について検討し、酸化と病態進行との関連性についても検討を加える。
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Research Products
(1 results)