2021 Fiscal Year Research-status Report
関節液に存在するエステラーゼを利用した変形性膝関節症の病態解析
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19K07195
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
今井 輝子 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (70176478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エステラーゼ / 変形性膝関節症 / 関節液 / 病態解析 / ブチリルコリンエステラーゼ / パラオキソナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症(OA)は高齢者が要支援や要介護になる原因の一つであり、数年から十数年をかけて進行する。病態は主にX線画像によってグレードⅠ~Ⅳに分類され、病態進行を予測する簡便な診断マーカーはない。OAでは滑膜の炎症に伴う毛細血管の亢進により、関節液中に血漿成分が移行する。本研究では、治療目的で採取される関節液中に存在する血漿由来のエステラーゼ活性と病態グレードとの相関を調べ、簡便な病態診断マーカーとしての応用の可能性を検討している。ヒト血漿由来のエステラーゼはブチリルコリンエステラーゼ(BChE)とパラオキソナーゼ(PON1)であり、PON1には2つの活性サイト(アリルエステラーゼ活性とパラオキソナーゼ活性)が存在する。グレードⅠ~Ⅳ(各11~24人)の患者検体において、BChEの活性および酵素タンパク質の会合状態は病態進行によって変動しなかった。一方、PON1のアリルエステラーゼ活性とパラオキソナーゼ活性はいずれも、グレードⅠからⅡへ移行する際に活性が低下し、その後はほぼ一定の値となることを明らかにした。また、この活性低下にはPON1の遺伝子多型は影響しなかった。PON1はHDL表面に結合して存在しており、病態進行によるPON1活性の変化は酸化ストレスと関係する可能性がある。今後、HDL-コレステロール量を測定するとともに、PON1活性の変動と酸化ストレス因子との関係について検討する。グレードⅠからⅡの移行期におけるPON1活性の低下は約25%であり、より正確な判断基準にするには、他の要因と組み合わせることが必要と考えられる。PON1活性の低下の要因を明らかにすることにより、OAの簡便な病態進行の診断マーカー創出の糸口を見出す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学を移動したこと、およびコロナ禍のために、実験が予定通りに進まず、やや遅れている。 これまでに、BChEの活性および4量体の会合状態は病態によって変化しなかったが、PON1のアリルエステラーゼ活性およびパラオキソナーゼ活性は病態初期のグレードⅠからⅡへの移行時に、いずれも約25%低下することを明らかにした。PON1の2つの活性中心は異なるアミノ酸残基から構成されており、アロステリックな変化が酵素活性に影響していると考えている。BChEとPON1はいずれも金属2価イオンと結合して、活性が変動することから、今後、イオンを介した酸化ストレスによる影響を視野にいれ、PON1活性の低下の要因を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
提供いただいたサンプルの患者背景と活性との相関を様々な視点から解析し、病態進行と酵素活性低下と関連するパラメーターを探索する。また、全関節液サンプルのHDL量を測定して、HDLコレステロール量と活性との関連を正確に求める。HDLコレステロール量と活性の関連がないことを確認した上で、患者背景から抽出された酵素活性低下の要因を精査するとともに、酸化ストレスによる酵素活性の変動について検討する。
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Causes of Carryover |
大学を移動したことおよびコロナ禍のために、実験が予定通りに進まず、次年度使用額が生じた。次年度は残りの実験に必要な試薬の購入、および論文執筆のための英文チェックおよび投稿料に利用する予定である。
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