2020 Fiscal Year Research-status Report
小児用製剤への応用を目指した、調剤機器を用いた顆粒剤調製法の構築
Project/Area Number |
19K07196
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
宮嵜 靖則 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (40551742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 造粒法 / 自転公転式ミキサー / 処方因子 / 顆粒特性 / 実験計画法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、小児に対して錠剤粉砕または脱カプセルを行い散剤として投与されている代表的な医薬品を、患者に投与可能な顆粒剤へ変更するための調製プロセスの構築を行った。 まず、臨床現場でのニーズの大きいダントロレンカプセルの顆粒剤化に取り組んだ。小児医療において、ダントロレンナトリウムは筋肉硬直を伴う痙性症候群の治療に用いられているが、経口剤はカプセル剤しかないため、調剤室で散剤に剤形変更して使用されている。しかし、散剤は分包精度が悪く、調剤機器を汚染する欠点がある。本研究ではカプセル内容物を、自転公転式ミキサーを用いて造粒し、調製した顆粒剤について評価した。5%顆粒を調製し賦形剤について検討した結果、平均粒子径が乳糖/トウモロコシデンプン、D-マンニットール、微結晶セルロース(MCC)で、それぞれ1042、1461、および485 μmとなり、MCCの造粒性が優れていた。また粒度別含量均一性もMCCが優れていた。崩壊時間はMCCにおいて他の製剤の66%であり溶出性は散剤と同等だった。以上の結果、賦形剤としてMCCを用いた顆粒剤は臨床使用可能と考えられた。 次いで、プロプラノロール錠粉砕物およびカルベジロール錠粉砕物をモデル医薬品として、製剤処方(賦形剤)の決定法について検討した。賦形剤は、粉末乳糖、トウモロコシデンプン、MCCを用い、賦形剤の適切な配合比について実験計画法(Simplex Lattice design)を用いて検討した。目標製剤の製剤特性値を、収率>90%、粒度分布幅(Span)<1.2、粒径(d90)<1,400 µm、崩壊時間 <2 minとして、調製可能な処方エリアを決定した。調製した顆粒剤の実測値と予測した特性値を比較した結果、実測値が予測値の95%信頼区間内にあり、本手法の妥当性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、顆粒剤の調製を医療機関で可能とするために、調剤機器(自転公転式調剤ミキサー、PCM)を用いた革新的な造粒方法の開発し、さらに顆粒剤に機能性を付与した新らたな小児用製剤を開発することを目的としている。 初年度はPCMを用いた造粒法において、造粒物の物性に影響を与える因子を抽出し、その制御方法を検討した。まず、結合水の添加量が重要な因子となることから、添加剤の塑性限界値(粉体の空隙が結合液で完全置換されるときの液量)に基づく適正量の決定法を確立した。その基礎として、添加剤の塑性限界値を正確かつ簡便に検出するために、添加剤練合物の針入抵抗値をデジタルフォースメータで測定する新規の手法を確立した。次いで、測定した塑性限界値とPCMの回転速度および回転時間との関係を網羅的に調べた。その結果、粒径が等しい造粒物を得ようとする場合、回転時間と結合水添加量が反比例の関係にあることを見出し、造粒を可能とする結合水添加量は塑性限界値の60-75%の範囲内で一義的に決定できた。バッチサイズの影響について検討した結果、装填率は30%前後が良好であり、容器サイズは大きいほど造粒が進行した。 本年度は、小児に対して錠剤粉砕または脱カプセルを行い散剤として投与されている代表的な医薬品(ダントロレンナトリウム、プロプラノロール、カルベジロール)を、患者に投与可能な顆粒剤へ変更するための調製プロセスの構築を行った。ダントロレン顆粒の検討から、基本工程を確立した。次いで、錠剤粉砕物を用いて、複数の賦形剤の配合量について、実験計画法によりデザインスペースを設定し、最適な処方を見出す手法を確立した。 以上のように、当初掲げた(1)造粒に及ぼす調製条件の影響の解明、(2)実用顆粒剤の調製プロセスの構築について順調に進行してきた。現在、(3)機能性顆粒剤の開発に向け検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの研究を基礎として、自転公転式ミキサーを用いた機能性顆粒剤の開発に取り組む。 まず、顆粒剤のマトリックス実質を工夫した製剤として、服用時に水を添加することにより急速にゲル化する易嚥下性の製剤を開発する。ゲル形成性の水溶性高分子を用いて顆粒剤を調製し、吸水試験、滑り性試験、溶出試験などにより機能性を評価する。 次いで、顆粒剤の糖衣コーティング法を開発する。造粒に引き続いて糖衣コーティングを行い、短時間で品質の高いコーティングを行う手法を開発し、実用顆粒剤に適用する。
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Causes of Carryover |
559円と少額であったことから、端数として残った。次年度に消耗品として使用したい。
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Research Products
(3 results)