2019 Fiscal Year Research-status Report
脂質生合成調節因子MLXIPLに作用するマイクロRNAに関する研究
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19K07198
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
柴山 良彦 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (90593822)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MLXIPL / ChREBP / miR-4685-5p / miR-4763-3p / 脂肪肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
MLXIPL(MLX Interacting Protein Like、別名 ChREBP)はトリグリセリド合成を担う遺伝子群を糖質濃度依存的に活性化させる転写因子である。MLXIPLは糖質過剰摂取に伴い、脂質生合成を上昇させるため、脂肪肝などを悪化させると考えられているが、その発現は組織により異なっている。短鎖RNAであるマイクロRNA(miR)は蛋白質への転写を制御し、様々な細胞機能を制御するが、MLXIPLの蛋白質発現を制御するmiRは全く知られていない。本研究では相補的に結合する可能性の高いmiRを細胞内に導入し、MLXIPL発現に及ぼす影響を分析した。 方法と結果: MLXIPLの発現レベルを確認するため、HeLa, HEP-G2, WiDr, COLO201におけるmRNA発現をRT-PCR法により確認した。全ての細胞でmRNA発現は認められたが、MLXIPLのアミノ酸鎖に相当する110kDaの蛋白質の発現はWiDr、COLO201に認められた。 バイオインフォマティクス解析によりMLXIPLに相補的に結合すると予想したmiR-4685-5p, 4763-3p, 5196-5pを、トランスフェクション法によりmiRを導入した結果、WiDr, COLO201において、miR-4685-5pはMLXIPL発現を有意に抑制し、miR-4763-3pは有意に抑制しなかった。miR-5196-5pは分析した4種の細胞において発現レベルが低く、MLXIPLに対して機能していないと予想された。 マイクロアレイ法で探索し、高脂肪食投与群で発現が上昇したmiR-127-5p、134-5pを細胞内にトランスフェクションした結果、MLXIPLのmRNA発現が抑制された。高脂肪食投与によりmiR-127-5p、134-5pの発現が上昇することでMLXIPL発現を抑制する可能性が考えられた。これらの結果を基にさらに研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で以下の成果が得られた。 MLXIPL発現: RT-PCR法によりHeLa, HEP-G2, WiDr, COLO201における発現を確認したところ、全ての細胞でmRNA発現があることが確認された。ウエスタンブロット法により蛋白質の発現を確認したところ、HeLa, HEP-G2では50 kDa程度の非特異的結合が確認できたが、MLXIPLのアミノ酸鎖に相当する110 kDa程度のバンドは確認できなかった。WiDr, COLO201では110 kDa程度のバンドが確認できた。 miRの発現: miR-4685-5p, 4763-3p, 5196-5pの発現を上記4種の細胞で確認したところ、miR-5196-5pの発現は極めて低いことが認められた。 miR-4685-5p及び4763-3pがMLXIPL発現に及ぼす影響: これらのmiRを上記4つの細胞に導入したところ、miR-4685-5pはMLXIPL発現を有意に抑制し、4763-3pでは有意差は認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえて、以下の計画を行う予定である。 miRがMLXILの蛋白質発現に及ぼす影響: これまでの成果を基に、WiDr及びCOLO201を用いて蛋白質発現に及ぼす影響を分析する。mRNAを抑制することが認められたmiR-4685-5pが蛋白質発現に及ぼす影響を分析する。 高脂肪食を110週間自由摂食させたマウス肝臓におけるmiR発現の変化をマイクロアレイ法により分析したところ、miR-127-3p, 127-5p, 134-3p, 134-5p, 153-3p, -299a-3pなどの発現が上昇することが認められた。これらのmiRはインフォマティクスでMLXIPLと相補的に結合する可能性の高いmiRと多くが一致していた。今後はこれらのmiRの機能解析を進める。
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Causes of Carryover |
令和2年の2,3月は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、リモートワークの推進が図られ、大学での研究のための時間が減少することとなった。また、防護具(ディスポ手袋など)の入手が困難になったため、一部資材の納入が年度内に行えなかった。 繰り越す予算は防護具等の購入や、細胞機能の解析、高脂肪食が染色体のクロマチンに及ぼす影響について、試薬等の購入予算に充てる計画である。
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