リアルワールドデータを用いたバイオシミラーの臨床的同等性評価と影響因子の分析

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K07210
• Research Institution: National Institute of Health Sciences
• Principal Investigator: 佐井 君江 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (20195960)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 佐藤 嗣道 東京理科大学, 薬学部薬学科, 准教授 (50305950)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: バイオシミラー / リアルワールドデータ / 抗TNFα抗体 / 副作用報告データベース / ナショナルデータベース

Outline of Annual Research Achievements

【目的】本研究は、リアルワールドデータを用いて、バイオシミラー（BS）の先行品との臨床的同等性の評価、ならびに同等性に影響する要因について分析・考察することを目的とする。前年度はインフリキシマブ（IFX）を対象に、各国の副作用報告データベースを用いた解析から、IFX（先行品及びBS）による副作用報告プロファイルは、国間で違いが見られたが、国ごとに報告件数の多い副作用に関しては、先行品とBSで共通性が高いことが示唆された。令和3年度は、さらに臨床的に重大な副作用に着目し、IFXならびに同効薬のエタネルセプト（ETN）を対象に、各先行品とBSの副作用報告の動向を各国のデータで比較し、BSの副作用報告の特性を考察した。【方法】副作用報告データベース（JADER：日本、VigiBase：韓・仏・独・伊・英・米）を用いて、IFX及びETNそれぞれの先行品及びBS（2品目）を対象に、臨床上で問題となる薬効欠如や、リスク管理計画に記載の特定されたリスク（感染症、悪性腫瘍、等）について、製剤毎の先行品に対するBSのReporting Odds Ratio（ROR）を求め、その傾向を国間で比較した【結果】IFX及びETNによる薬効欠如や感染症のRORは、一部のBSで有意な国が認められたが、報告件数の割合の差（<8%）やオッズ比(2～3)の程度は顕著ではなく、大半の国で有意差は無かった。また、重篤疾患である悪性腫瘍（IFX, ETN）や脱髄疾患（IFX）に関しては、何れのBSもRORは低く(<1.0)、大半の国で有意に低かった。【考察】本解析から、全般的に、IFXとETNのBSに関し、臨床的に重大な副作用の発現が先行品よりも増大する可能性は低いことが示唆された。なお、一部のBSで薬効欠如や感染症が多い国が見られたが、その要因や臨床的意義については、他のデータソースによる解析で確認が必要である。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

令和3年度は、令和2年度後期から開始された新型コロナウイルス感染症対策の緊急業務が継続となったこと、また、ナショナルデータベース（NDB）を用いる解析に関しては、データ運用管理上の変更を行う必要が生じ、厚労省への変更届を行い、承認を得るまでに時間を要したことから、年度内の解析は困難となり、計画に遅れが生じることとなった。

Strategy for Future Research Activity

令和2年度からの緊急業務は令和3年度に一旦終了したが、令和4年度より新たなコロナ対策関連の業務が開始されたことに伴い、計画の進行に影響が出る可能性があるが、業務の調整を行いながら、NDBによる解析を開始する予定である。また、副作用報告データベースを用いる解析では、他の同効薬に関しても臨床上の重大な副作用に関して解析を実施する予定である。なお、NDBオープンデータを用いた予備調査では、BSの処方総数は何れの対象医薬品も少数例であったことから、実際に利用するNDBの抽出データにおいて、統計的な解析が困難と考えられる項目については、省略・変更する可能性がある。
1.副作用データベースを用いた解析：WHOの副作用報告データベースを用いて、アダリムマブによる副作用報告プロファイルに関して、先行品とBSとの比較を複数国のデータで実施する。
2.NDBを用いた解析：インフリキマブ及びエタネルセプトを対象に、2014年11月～2020年6月のNDBデータを用いて、解析計画書を詳細化し、解析を実施する（方法は、前年度からの変更はないため、省略）。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症の蔓延による影響から、当初予定していた出張の中止等により、使用額が変更となり、次年度の調査研究費に使用することとした。次年度は、研究打合せや学会等への参加費、関連研究の文献調査や副作用データベース解析等の人件費に使用する予定である。