2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K07213
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小原 拓 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 准教授 (80612019)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小児 / 向精神薬 / 薬剤疫学 / 副作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年2月13日時点で利用可能であった日本のレセプトなどの医療費請求の記録をデータベース化したclaims database(JMDC Claims Database)を用いて、小児におけるADHD(注意欠如・多動症)治療薬(メチルフェニデート徐放錠;OROS-MPH、アトモキセチン;ATX)と心血管系疾患リスクとの関連を推定することを目的に、7,773人の小児を対象とした後ろ向きコホート研究を実施している。これまでの検討に加え、不整脈および高血圧症を心血管系疾患アウトカムに追加したCOX比例ハザードモデル解析を行った。その結果、ADHD治療薬処方群では、非処方群と比較して、心血管系疾患イベントのリスクが高値であり(感度分析におけるハザード比:1.51~2.37)、小児ADHD治療薬処方患者における心血管系疾患イベント発生には留意する必要性が示唆された。 2012年1月1日から2018年12月31日までに包括医療費支払い制度(DPC)対象医療機関のDPCデータベースであるMDV analyzer(Medical Data Vision(株))に登録されている小児ADHD外来患者に対するOROS-MPH、ATX、グアンファシン(GF, 2017年発売開始)の処方率の経時変化を評価した。男児において、OROS-MPHおよびATXの処方率は、それぞれ46.5%から37.2%、18.6%から15.6%と減少し、GFの処方率は0.0%から12.3%へと増加していた。女児において、OROS-MPHの処方率は37.0%から26.4%と有意な変化は認められず、ATXの処方率は23.1%から16.3%と減少していた。GFの処方率は0.0%から12.8%と増加が認められた。小児ADHD外来患者に対するOROS-MPHおよびATXの処方が、GFに切り替わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、小児ADHD患者におけるADHD治療薬使用による心血管系疾患発症リスクの上昇に関する既存の懸念の検証を精緻に行い、アウトカム定義や解析条件等の感度分析も適宜行っている。 健康保険組合の支払い請求データベースに加えて、包括医療費支払い制度対象医療機関のデータベースも活用し、小児ADHD患者に対する処方状況を明らかにし、より最近の薬物治療の実態を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
検討に用いるデータベースの更なる拡張も視野に入れながら、これまで得られた結果を論文という形で公表し、臨床現場にフィードバック可能な情報とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のために、学会参加等が見送りとなり、次年度使用額が生じた。次年度はさらに成果創出を進めるとともに、これまでの成果を集約する。
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