2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒト腸管におけるCYP3A4誘導の分子機序及び肝臓との異同の解明
Project/Area Number |
19K07226
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
保坂 卓臣 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30611579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志津 怜太 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (50803912)
佐々木 崇光 静岡県立大学, 薬学部, 客員共同研究員 (20382674)
吉成 浩一 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (60343399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸管 / 肝臓 / 酵素誘導 / CYP3A4 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト肝臓由来細胞とヒト腸管由来細胞での種々薬物によるCYP3A4酵素誘導作用の異同を明らかにし、腸管独自の酵素誘導機序が存在するならば、その機序を解明することを目的とした。ヒト肝モデル細胞としてHepaRG細胞を、ヒト腸管モデル細胞として大腸腺癌由来のLS180細胞を用いた。ヒト肝細胞でCYP3A4誘導作用が報告されている14種の薬物を両細胞に処置後、総RNAを抽出し、qRT-PCRによりCYP3A4 mRNAレベルを測定した。その結果、これら薬物によるCYP3A4の誘導倍率は両細胞間で相関しなかった。特に、糖尿病治療薬で核内受容体PPARγのアゴニストとして知られるPioglitazoneやRosiglitazone(Ros)は、LS180細胞においてのみ著しく強くCYP3A4を誘導することを見出した。これらの結果はヒト腸管におけるCYP3A4誘導が、肝臓とは異なる機序で制御されていることを示唆している。 次に、LS180細胞でのRosによるCYP3A4誘導機序を解析した。核内受容体PXRまたはPPARγ応答配列をもつレポータープラスミドをLS180細胞に導入後、種々濃度のRosで処置し、レポーター活性を測定した結果、0.3 μM以下ではPPARγのみが、1 μM以上では両受容体が活性化することが示された。次にCYP3A4 mRNAレベルをqRT-PCRにより測定した結果、0.1 μM Rosでは弱い増加が、30 μM Rosでは顕著な増加が認められた。また、0.1 μM及び30 μM RosによるCYP3A4誘導は、PPARγアンタゴニストSR16832の前処置により、それぞれ完全に、又は部分的に抑制された。これらの結果から、LS180細胞でのRosによるCYP3A4誘導には、低濃度ではPPARγが、高濃度ではPPARγとPXRが関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の大きな目標は、ヒト肝臓由来細胞とヒト腸管由来細胞の間で薬物によるCYP3A4誘導作用の異同があるか否かを明らかにすることであり、被験薬物数は多くないものの、この目標はおおむね達成できた。さらに、腸管由来細胞独自のCYP3A4誘導機序についての解析も進めることができたため、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
PPARγおよびPXR標的siRNAを用いて、LS180細胞でのRosによるCYP3A4誘導におけるPPARγおよびPXRの寄与を明らかにする。さらに、高濃度Rosによる著しく強いCYP3A4誘導はPPARγとPXRを同時に活性化することによるものか明らかにするために、低濃度RosとPXRアゴニストRifampicinの共処置により、高濃度Rosと同程度の誘導が起こるか調べる。また、LS180細胞以外のヒト腸管由来細胞でもRosは著しく強いCYP3A4誘導作用を示すか検証する。Rosとは構造的に異なるPPARγアゴニストもRosと同様の作用を示すかについても検証する。
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Causes of Carryover |
高価なHepaRG細胞を多く購入する予定であったが、想定よりもスムーズにHepaRG細胞とLS180細胞で明確に異なるCYP3A4誘導作用を示す薬物を見つけることができ、HepaRG細胞を購入せずに済んだため。また、新型コロナウイルスの影響で日本薬学会第140年会が開催中止となり、旅費として使用できなかったため。生じた次年度使用額は、ヒトiPS細胞由来腸管様細胞の購入費およびそれを用いた実験のための試薬・器具の購入費として使用する予定である。
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