2020 Fiscal Year Research-status Report
薬物代謝酵素シトクロムP450の性特異的制御におけるmicroRNAの役割
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19K07228
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
佐久間 勉 奥羽大学, 薬学部, 教授 (30250468)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 性差 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物代謝酵素は体内における薬物の構造変換を担い、薬効、有害作用の発現や重篤度に関与する酵素群である。その活性には男女差(雌雄差)が存在する。本研究は薬物代謝酵素の活性に性差が生じる原因を明らかにし、性差およびその変動に関連して起こる薬物の薬効変動、有害作用や薬物間相互作用の予測に役立つ情報を明らかにすることを目的としている。本年度もマウスを用いた解析を行い、肝臓においてメス特異的に発現するマウスCyp3a41の調節に関わる核内受容体の活性調節機構の一端を明らかにした。 CYP3A遺伝子は肝臓では主にHNF4αやPXRによって、小腸ではVDRによる調節を受ける。核内受容体の活性はリン酸化状態の違いにより異なる可能性があり、標的遺伝子CYP3A遺伝子の発現にも影響が現れることが予想される。核内受容体には高度に保存されたリン酸化部位が存在し共通の調節機構となっている可能性がある。今回DNA結合ドメイン(DBD)に見いだした高度に保存されたリン酸化部位(HNF4αではSer 68、VDRではThr32)についてリン酸化を模倣する模擬変異体を用いた解析により、HNF4αSer68はリン酸化により転写活性化能が減弱する一方、VDR Thr32では転写活性化能が増強する化能性が示された。後者はVDRが標的DNAに直接結合する形では活性への影響、前者はHFN4αがDNAに直接結合せずPXRとのタンパク質相互作用を介した活性への影響と推測され、同一部位のリン酸化修飾でもDNA結合への影響かタンパク質相互作用への影響かによって異なる事が示唆された。本研究では性差が生じる一因としてmicroRNAの関与に注目しているが、上記の違いとmicroRNAの関わりについて解析を進めたい。昨年度VDRにmicroRNAによる調節の化能性を示す結果が得られたが、それについても解析を続けたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではマウス遺伝子発現の解析に肝細胞初代培養系を用いる。しかし代表者が使用しているプロトコルは遊離肝細胞回収率が不安定であり、本年度も大きな改善は見られなかった。季節や実験場所の都合による回収率の低下や細胞の状態不良が起こり、十分な数の細胞を準備出来ないことがあった。これが研究進行を妨げる一因となった。また、レポーター遺伝子解析に用いるプラスミド構築において、特定の構造のプラスミド構築に困難があった。解析に必須なプラスミドであるため計7通りの異なる方法で作製を試みたが未だに構築できていない物があり、遅延の一因となった。加えて新型コロナウイルス感染拡大への対応や、2月に起こった大地震による研究室の甚大な被害も遅延の要因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記した様に、状態の良いマウス初代培養肝細胞の安定的な回収が研究進捗の律速になっている。昨年度も記したように冬季より夏季の方が細胞回収率が高いため、マウス初代培養肝細胞を使う実験を夏季に集中させ、実験が安定して進行できるように工夫したい。マウス肝細胞初代培養系の代替として、安定して細胞を用意できる株化培養細胞の利用も検討したい。プラスミド構築に関してはこれまで使用していないキットを活用するなどこれまでと異なるアプローチを試みたい。これらの改善により、研究の進行速度を上げられるようにしたい。新型コロナウイルス感染拡大の影響は本年も続きそうだが、昨年の経験を参考に影響を極力減らしたい。地震被害はほぼ現状復帰できたので、次年度への影響は少ないと思われる。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に記した様に、研究の進行が遅れた為に次年度使用が生じた。令和3年度には、マウス初代肝細胞系の培養条件を改良することやプラスミド構築戦略の変更などで進捗の遅れを取り戻す予定である。そのため使用計画内訳に大きな変化はない。
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