2020 Fiscal Year Research-status Report
ナノ炭素材料が生体の異物処理機構に及ぼす影響と生体安全性に関する網羅的評価
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19K07233
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
灘井 雅行 名城大学, 薬学部, 教授 (00295544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 美紀 名城大学, 薬学部, 准教授 (70345594)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ炭素材料 / カーボンナノチューブ / 薬物輸送担体 / 薬物代謝酵素 / ヒト結腸がん由来Caco-2細胞 / ヒトiPS細胞由来小腸型腸管上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト結腸がん由来Caco-2細胞に、ナノ炭素材料としてとして、単層のカーボンナノチューブであるSWNT EC1.5-PとSO-SWNT、および多層カーボンナノチューブを100 μg/mLの濃度で3日間曝露した。Caco-2細胞からRNAを抽出し、PCR arrayを用いて84種類の薬物トランスポーターの発現に及ぼす各ナノ炭素材料の影響を検討したところ、SWNT EC1.5-PとSOにより一部のABCトランスポーターの発現が低下した。しかし、SLCトランスポーターには影響を及ぼさなかった。EC1.5-PはeDIPS法により、SOはArc放電法により製造されたものであるが、製造方法が異なってもトランスポーターに与える影響は類似していた。一方、多層カーボンナノチューブによりこれらのトランスポーターの発現変動は認められなかった。以上より、カーボンナノチューブの種類により、薬物トランスポーターに与える影響は異なることが明らかになった。 また、ヒトiPS細胞由来小腸型腸管上皮細胞であるCellartis Intestinal Epithelial Cellsを用いて、SWNT EC1.5-Pの曝露が84種類の薬物トランスポーターに及ぼす影響について検討した。その結果、Caco-2を用いた実験で認められたよりも多くの遺伝子の発現変動が認められ、7遺伝子の発現が増加し、2遺伝子の発現が減少した。iPS由来腸管上皮細胞ではCaco-2よりも薬物トランスポーターの発現量が高いものが多かったため、多くのトランスポーターに影響を及ぼした可能性が考えられる。特に、iPS由来腸管上皮細胞ではSLCトランスポーターに多く変動が認められた。 次年度は、今年度の検討で変動が認められた薬物トランスポーターについて、その発現変動メカニズムについての検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、ヒト結腸がん由来Caco-2細胞およびヒトiPS細胞由来小腸型腸管上皮細胞であるCellartis Intestinal Epithelial Cellsに、昨年度検討したナノ炭素材料の細胞培養液への分散液を用いて、単層カーボンナノチューブであるSWNT EC1.5-PとSWNT SO、および多層カーボンナノチューブを100 μg/mLの濃度で調製、3日間曝露し、PCR arrayを用いて薬物トランスポーターの発現に及ぼす各ナノ炭素材料の影響を検討した。その結果、単層CNTと多層CNTでCaco-2細胞に発現している薬物トランスポーターに及ぼす影響が異なること、また、Caco-2の細胞とCellartis Intestinal Epithelial Cellsでは、SWNT EC1.5-Pの曝露により変動する遺伝子の種類が多いことが明らかになった。 しかし、実験動物への投与に用いる分散液については、毒性を示さない界面活性剤の種類と濃度を検討し、分散状態を維持したまま動物への投与を可能にする条件を明らかにすることを予定していたが、充分な成果を得るには至らなかった。このため、実際にDDSのキャリアとして用いる濃度を想定した実験について結果は得られていない。また、本年度はコロナ感染症拡大防止の観点から、研究活動が制限された部分もあり、実験動物を用いた検討に入ることができなかった。一方、現在、実験動物としてラットを用い、小腸および腎臓の薬物トランスポーターの遺伝子とタンパク質の発現に及ぼすナノ炭素材料の影響について検討を進めるため、これら臓器での遺伝子およびタンパク質発現量の測定方法の確立を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、ナノ炭素材料が異物処理機能に及ぼす影響を明らかにするため、今年度の検討で得られたヒト結腸がん由来Caco-2細胞およびヒトiPS細胞由来小腸型腸管上皮細胞であるCellartis Intestinal Epithelial Cellsに対して、単層カーボンナノチューブSWNT EC1.5-PとSWNT SO、および多層カーボンナノチューブを暴露することで発現変動が認められた薬物トランスポーターについて、その発現変動メカニズムについての検討を行うことを予定している。また、ヒト結腸がん由来Caco-2細胞を中心に、尿細管由来細胞なども用いて、ナノ炭素材料を暴露した時の、基質薬物の輸送活性の変化について、Transwell上で培養した細胞にナノ炭素材料を、濃度、暴露時間を変化させて暴露するなどの方法により、各トランスポーターの基質となる薬物の輸送活性がナノ炭素材料の暴露によりどのように変化するかについて検討することを予定している。 実験動物を用いた検討としては、ナノ炭素材料をラットに経口投与あるいは静脈内投与した後、血液生化学検査を実施し、肝障害や腎障害の有無について検討するとともに、消化管、肝臓、腎臓等を採取し、代表的な第Ⅰ相および第Ⅱ相薬物代謝酵素、薬物トランスポーターについて、遺伝子およびタンパク質発現量の変動定量的に評価する予定である。また、ナノ炭素材料を投与した実験動物において、上記の薬物代謝酵素やトランスポーターの基質となる薬物の体内動態について検討し、培養細胞を用いてこれまでに得られたin vitroの実験結果や、実験動物の各臓器での実験結果との整合性について考察することを予定している。
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