2022 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類の脳容積拡大を可能にした頭蓋底の形態進化過程の解明
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19K07244
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
古寺 敏子 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (90822809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武智 正樹 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (10455355)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 形態進化 / 神経堤細胞 / 軟骨頭蓋 / Dlx1ミュータントマウス / 三次元再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は頭蓋底の形態進化を、哺乳類胚(マウス、カモノハシ、オポッサム等)及び爬虫類ー鳥類胚(ヤモリ、ニワトリ等)の発生から比較解剖学的に明らかにすることである。 羊膜類の軟骨頭蓋前半部の発生過程における未解決の三つの問題について、1)爬虫類-鳥類では存在する耳前柱が哺乳類では消失することを、マウス胚の脳褶曲部位におけるSox9及びCola2の遺伝子発現が一過性であった結果から考察できると考えている。また同部位における他遺伝子の発現についてはまだ検討中である。2)哺乳類の梁軟骨の発生過程は、中間梁軟骨と一対の軟骨原基から形成されるニワトリの梁軟骨と同じであるかは、ニワトリ胚と同様、マウスの梁軟骨も1対の梁軟骨原基から形成され、その間が軟骨で埋まることをマウス13.5~15.5日胚の頭蓋軟骨染色から確認済みである。 3)哺乳類以外では梁軟骨の内側は下垂体と内頸静脈が収まる領域であるが、哺乳類の下垂体直下に形成される軟骨(下垂体軟骨)はニワトリの極軟骨と相同か、あるいは新規形成物か、の問題についてはニワトリ胚の蛍光DiI標識細胞の移動実験と焼却実験から、ニワトリの極軟骨が鰓弓の上顎由来であることを確かめている。よって鰓弓上顎要素の神経堤細胞がDlx1で標識された遺伝子組み換えマウス (Dlx1-creERT2:R26R)のX-gal染色を行ったところ、ニワトリの極軟骨にほぼ相同な位置にDlx1の発現が一部に認められていた。しかし以前から染色に個体差があること、さらにDlx1の標識部位が予想外に吻側部位に確認できたことから、ニワトリと相同な部囲の特定を目指していたが、ミュータントマウスの繁殖が進まず十分な胎児数が獲得できなかった。従って、今後胎児を確保し実験を継続し検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度に所属機関を移動した後、実験環境を整える時間が予想よりさらにかかってしまった。 哺乳類のうち単孔類のデータを得るためのサンプルを手に入れることができなかった。 また引き続きこれまで取得しているDlx1ミュータントマウスを解析したところ、表現形に差があり、安定した結果を求めるためにさらに数が必要になった。ところがDlx1-CreERT2; R26RLacZ/LacZ♀マウスの維持が度々危うくなり、解析に必要な数のミュータントマウスを手に入れることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中心が哺乳類と爬虫類ー鳥類の比較解析であるので、ニワトリ胚の蛍光DiI標識細胞の移動実験と焼却実験から求められた結果をさらにブラッシュアップする。特に焼却実験を続ける。 2023年度に入ってDlx1ミュータントマウスのサンプルが揃ってきたので、引き続きX-gal染色によるニワトリの極軟骨に相当する位置の比較検討を行う。 中断中のソメワケササクレヤモリ胚(Paroedura pictus)のHE染色連続切片の三次元再構築を完了させる。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更のため、実験環境の立ち上げと、以前と同様の実験結果が得られるかのトライアルに時間がかかった。 研究が進んでいく上で可能な昨今の最新データ解析(Rna-seq等)のための費用と実験に関わる試薬、器具に使用する。
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