2019 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変両生類を用いた新たな骨リモデリング機序の解析方法の確立
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19K07245
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
雪田 聡 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80401214)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 浩彰 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50227930)
林 利憲 広島大学, 両生類研究センター, 教授 (60580925)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 両生類 / CRISPR/Cas9システム / 遺伝子欠損 / OPG / RANK / RANKL / SOST |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は哺乳類において骨代謝に関わることが知られいている遺伝子OPG, RANK, RANKL, SOST遺伝子を標的とし、CRISPR/Cas9システムによりこれらの遺伝子を欠損したネッタイツメガエルおよびイベリアトゲイモリを作出して骨への影響を検討することで、両生類と哺乳類の骨代謝の分子機構がどの程度保存されているかを明らかにすることを目的としている。 本年度、まずはネッタイツメガエルおよびイベリアトゲイモリの骨組織でこれらの遺伝子が発現していることをRT-PCRまたはリアルタイムPCR法により確認した。さらに、イベリアトゲイモリにおいてOPG遺伝子を標的とするgRNAをインジェクションした個体の作出に成功し、そのゲノムDNAを抽出してPCRによる確認を行った。その結果、実験デザイン通り遺伝子が欠損していることを示す個体を多く得た。現在までに遺伝子欠損と考えられる個体の雌雄を掛け合わせた次世代が得られたので、これら次世代個体を維持しつつ、OPG遺伝子の塩基配列を確認し全ての細胞でOPG遺伝子が欠損しているかを確認する予定である。また、他の標的遺伝子RANK, RANKL, SOSTについても同様に遺伝子欠損個体の作出を急ぐ。ネッタイツメガエルにおいては、gRNAをインジェクションした胚の生存率が非常に低く、今年度はチロシナーゼ遺伝子を標的とするgRNAを用いてアルビノ個体の作出率を高める条件検討を行った。その結果、現在までに全身の色素を欠損したアルビノ個体を複数得るに至り、実験条件がほぼ固まった状態である。今後、OPG遺伝子をはじめその他のgRNAのインジェクションを行い遺伝子欠損個体の作出を急ぐ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では本年度中にイベリアトゲイモリおよびネッタイツメガエルにおいてOPG遺伝子欠損個体の作出を終え、変態前後まで飼育して骨への影響を組織学に検討する予定であった。イベリアトゲイモリについては、gRNAインジェクション個体(以下crispant)を得ることができたが、genotypingの結果、細胞の遺伝子欠損率が低い事が明らかになった。その後、このcrispant個体同士を掛け合わせた次世代個体が得られ、その個体についてPCRにより遺伝子欠の損を確認した結果、実験デザイン通りの遺伝子欠損が起こったことを示す結果を得られたため、現在塩基配列の解読の準備をしている。一方、ネッタイツメガエルでは、実験開始直後はgRNAインジェクションによりほぼすべての胚が数日内に発生を停止した。そこで、針の形状およびインジェクション前後の培養液、CRISPR9タンパク質およびgRNAのインジェクション量について実験条件を検討した。その結果、チロシナーゼ遺伝子を標的とするgRNAを注入したcrispantの生存率がかなり改善されたため、骨代謝関連遺伝子を標的とするgRNAをインジェクションしたcrispantの作成を急ぐ必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
イベリアトゲイモリについいては、OPG遺伝子欠損に成功したことを強く示唆する結果が得られている。塩基配列を確認した上で、これらの個体を飼育し、骨組織を野生型と比較する。これまでの実験成果から、本課題で標的とする4つの骨代謝関連遺伝子が骨組織に発現していること、また、変態後体長が10㎝程度まで成長した個体の四肢長管骨で軟骨基質の吸収が開始され、それに伴ってTRAP陽性の破骨細胞が出現する事を確認しているため、遺伝子欠損個体を作出し飼育できれば、野生型と骨形成時の破骨細胞誘導能を比較することができる。OPG遺伝子欠損でやや手間取った一因にはgRNAの設計があると考えられ、今後、他の標的遺伝子のgRNA設計にはcrRNAとtracrRNAとのアニーリング法に代わる方法を採る事も検討する。ネッタイツメガエルについては、インジェクションの条件検討がほぼ整ったと期待できるため、標的遺伝子gRNAによるcrispantの作出を急ぐ。なお、野生型のネッタイツメガエルの脛腓骨形成過程を詳細に検討し、破骨細胞様細胞の出現時期がかなり遅く、性成熟が近い個体で見られることも本研究課題で明らかになった。このことは、無尾類と有尾類の骨形成過程の時期に大きな隔たりがあることを示唆する興味深い知見であると同時に、今後、crispantの骨組織を観察する時期についても重要な示唆を与える結果であり、当初予定よりもかなり成長した個体で骨組織を観察する。
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Causes of Carryover |
使用する消耗品の種類や量、購入する時期を工夫することにより最大限物品費を抑えるよう努力した結果、当初予定よりも消耗品費を削減できたため少額ではあるが次年度使用額が生じた。これは、今後行う実験に使用する消耗品に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)