2021 Fiscal Year Research-status Report
上陸時の器官進化の保守と革新を可視化するGCM2複合体標的遺伝子座の網羅比較解析
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19K07258
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
岡部 正隆 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10300716)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Gcm2 / 副甲状腺 / 鰓 / マウス / ゼブラフィッシュ / 転写制御 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの格段の努力にも関わらずGcm2-APEXノックイン動物の作製は困難であった。それに変わる方法として、培養細胞を用いた実験系を構築し、転写制御因子Gcm2の機能解析を行った。HEK293培養細胞とGcm2標的配列を有するレポーター遺伝子を用いた実験から、マウスGcm2とゼブラフィッシュGcm2では、そのTAD(TransActivating Domain)の転写活性化能に顕著な差があり、 HEK293にはマウスGcm2のTADを介して協働するコファクターが存在することが明らかになった。そこでマウス、ゼブラフィッシュのGcm2-APEXプラスミドをHEK293に導入し、Gcm2-APEXに近接するタンパク質をビオチン化することで、コファクターの標識を試みた。ビオチン化されたタンパク質の細胞内局在を顕微鏡下で観察したところ、ゼブラフィッシュGcm2-APEXではビオチン化されたタンパク質核内に多く存在するのに対し、マウスGcm2-APEXでは細胞質に多く存在した、Gcm2標的配列レポーターも導入してGcm2-APEXの転写活性も同時に可視化したところ、ビオチン化タンパク質が細胞質に存在するマウスGcm2導入細胞でのみ、レポーター活性が検出された。このことから、Gcm2が核外に移動することが転写活性に重要であることが示唆された。マウスGcm2の核外への移動と転写活性化の気候には、マウスとゼブラフィッシュ間のTADの構造の違いと関連していると考え、現在TAD内の責任領域の特定を進めている。 Gcm2の標的遺伝子座の同定と、Gcm2により誘導されるオープンクロマチン領域の同定をするためにATAC-seq解析を採用することにした。そのためには副甲状腺細胞を単離する必要があるが、Gcm2-EGFPマウスを新たに導入し、甲状腺内に埋没する副甲状腺細胞を単離することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度に引き続き新型コロナの影響を受け、研究活動のエフォート率が低下している。当初作製予定であったApex-tagをノックインした動物についてさまざまな条件検討を行ってきたが、成功に至っていない。しかしながら、HEK293細胞にマウス、ゼブラフィッシュのGcm2-APEXを導入した実験を行い、2種間でGcm2の機能的差異を明らかにすることができた。Gcm2-APEXによる協働するコファクター(タンパク質)のビオチン標識は細胞内で比較的広範囲に行われてしまうため、条件検討を進めている。この問題は、APEXタグノックイン動物を使った方法でも同様に生じることが想定され、動物内では培養細胞よりも細かな条件設定は困難と考えられる。そのため、前述の条件検討を進めつつ、2種間の転写活性能の違いの責任領域をTAD内に同定し、そのアミノ酸配列から、コファクターを予測する方法も同時に進めている。 Gcm2の標的遺伝子座とその効果としてのオープンクロマチン領域の同定をするために当初はChIP-seq解析を用いる計画であったが、ATAC-seq解析であれば、副甲状腺細胞におけるエピジェネティック修飾の情報が十分でなくとも、オープンクロマチン領域を特定できる。副甲状腺細胞を単離するために、Gcm2-EGFPマウスを新たに導入し、甲状腺内に埋没する2mm未満の副甲状腺を摘出し、副甲状腺細胞を単離することに成功した。さらにこのマウスとタモキシフェン誘導型Gcm2コンディショナルノックアウトマウスであるTm-Cre/Gcm2floxマウスを掛け合わせたマウスを作製し、タモキシフェンによりGcm2が存在しないマウスの副甲状腺細胞を単離できた。Gcm2を有する副甲状腺細胞と、Gcm2を欠失した副甲状腺細胞を用いてATAC-seq解析の比較を行うために、使用するマウスを必要数生産し、その準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
Gcm2と協働するコファクターにマウスとゼブラフィッシュで違いがあることは明らかになったが、APEXを用いたコファクターの同定だけでなく、2種間での転写活性化能の違いの責任領域をTAD内に同定し、その配列から協働するタンパク質の同定も行う。 2種間で変更された標的遺伝子座とその効果としてのオープンクロマチン領域の同定は Gcm2コンディショナルノックアウトマウスを使ったGcm2KO副甲状腺と正常な副甲状腺のATAC-seq解析の比較で行う。また、ゼブラフィッシュに関しては野生型とCRISPR/Cas9を用いたKOゼブラフィッシュを用いて、鰓のATAC-seqの比較解析を行う。マウスの結果と比較することで共通・非共通のオープンクロマチン領域が特定できる。 マウスGcm2の標的遺伝子と考えられる遺伝子群を、研究代表者の講座に所属する辰巳徳史講師が、副甲状腺細胞のシングルセルトランスクリプトーム解析を実施するため、このデータも利用して絞り込みを行う。ゼブラフィッシュでは、オープンクロマチン領域のデータを利用し、野生型とKOゼブラフィッシュを用いてGcm2の下流遺伝子探索を行う。 ゼブラフィッシュに関しては、これらの解析により、1遺伝子(Gcm2)から始まる種間のカスケードの違いを明らかにし、鰓から副甲状腺へと進化するメカニズムを理解する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響を受け、研究活動のエフォート率が低下し、動物を用いた実験に大きな遅れを生じた。また、使用する試薬等も新型コロナの影響を受け、実験が計画通り遂行できなかった。現在は実験に必要なTm-Cre/Gcm2FloxマウスとGcm2-EGFPマウスとを掛け合わせて実験に使用するマウスを作成しているが、今年度は必要な数のマウスを確保できなかった。そのため、次年度では繰り越した予算を用いて以下の実験を行う。上記のマウスを使用してATAC-seq解析を行う。ゼブラフィッシュでも鰓のATAC-seq解析を行い、標的遺伝子座の同定と、オープンクロマチン領域の特定を行う。さらにコファクターの探索のために培養細胞を用いてTAD内の責任領域の同定を行う。
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Research Products
(1 results)