2020 Fiscal Year Research-status Report
Relationship of selective vulnerability and vessel environment in the brain
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19K07259
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
水谷 健一 神戸学院大学, 薬学研究科, 特命教授 (40469929)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管老化 / 大脳皮質 / VEGF受容体 / 選択的脆弱性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らのこれまでの研究から、発生期の大脳皮質では、血管の形態・分子的な特徴が領域特異的に区別され、これによって構築される『領域独自の血管環境』が神経の発生・分化に重要な役割を果たすことを明らかにしている。しかしながら、成体、あるいは加齢・病態において脈管系の領域特異的な血管環境が構築されているのか否か、また、その生理的な役割について、明らかにするには至っていない。本研究では、種々の神経疾患で観察される脳内部位選択的な脆弱性は、脳の領域選択的な脈管系の構造的特徴、あるいは加齢による領域選択的な劣化が関与する可能性に着目した。
本年度は、血管リポーターマウス(VEGFR(血管内皮成長因子受容体)1-DsRed BACtg)を用いて、加齢に伴う血管密度の変化を画像解析で定量的に解析する実験系を模索した。具体的には、マニュアルによる評価ではコントラストの強弱によって数値が影響を受け易いことから、Auto Local Threshold機能を用いて、任意のポイントを中心とする円中の輝度の平均値を閾値とするMean手法を用いて自動的な解析を検討した結果、VEGFRの蛍光強度を指標として血管密度を安定的に評価できることが確認された。
そこで、様々な血管系疾患に対して予防効果を示す可能性が指摘されている抹茶に着目し、抹茶の摂取が脳の毛細血管老化に対して予防的作用を有するのか否かを血管リポーターマウスの脳血管密度を指標に評価すると共に、組織培養と血管内皮細胞を用いることで、その血管老化抑制作用を解析した。その結果、抹茶の長期摂取は、ある特定の大脳皮質領域における毛細血管老化に対して予防的な効果を示すことを見出した。さらには、抹茶と、抹茶に豊富に含まれるビタミンK1やルテインが、血管新生能を顕著に亢進することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、脳(特に、大脳皮質)を構成する神経細胞の中で障害を受けやすい領域に着目し、この領域に位置する毛細血管が老化の影響を優先的に受け易いとの仮説の元、研究を進めている。その結果、当初想定していたとおり、神経細胞が優先的に脆弱である領域では、比較的早期から、毛細血管の老化が優先的に進行している可能性が確認された。さらには、この優先的に脆弱な領域における血管老化は、栄養成分の摂取によって老化が予防できる可能性が示唆された。以上のことから、当初期待していたとおり、研究計画がおおむね順調に進展しており、今後、その分子機構や生理的意義がさらに明確化されることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、(1)すでに得られた萌芽的な実験結果の再現性を追求すると共に、(2)アルツハイマーモデル動物の脳組織を解析し、いかなる選択的脆弱性が存在するかを明確化したい。さらには、(3)老齢脳やアルツハイマー脳の限られた領域が何故脆弱であるのかを血管老化の観点からさらに分子的に追求することで、研究を発展させる予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも消耗品の支出額が少なかったため
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