2019 Fiscal Year Research-status Report
グルタミン酸受容体の1分子内サブユニット構成の同定と細胞膜上局在の解明
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19K07264
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
黒田 一樹 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (60557966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深澤 有吾 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60343745)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | AMPA型グルタミン酸受容体 / SDS処理凍結割断レプリカ標識法 / 膜分子複合体 / サブユニット構成 / 局在解析 / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内の速い興奮性シナプス応答を担うAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)は、4つのサブユニットで構成された膜分子複合体で、構成するサブユニットの種類(1-4)の違いにより、その応答特性やシナプス可塑性における役割が異なることが報告されている。しかし、サブユニット構成の異なるそれぞれのAMPARが、機能的に区画化された神経細胞の細胞膜上にどの様に分布して機能を支えているかについては、複合体のサブユニット構成を1分子レベルで調べる方法が無いため不明である。 そこで本申請課題では、膜分子の分布を高い空間分解能と感度で可視化できるSDS処理凍結割断レプリカ標識法(SDS-FRL法)を改良して、神経細胞膜上に発現するAMPARのサブユニット構成を同定し、サブユニット構成の異なるAMPARの膜上分布を明らかにする。AMPARの基本サブユニットにはGluA1、GluA2、GluA3とGluA4があり、GluA2は通常RNA編集によりアミノ酸置換(QからR)され、このGluA2を含むAMPARはCa2+非透過性(CI)となり、含まないAMPARはCa2+透過性(CP)である。成熟マウスの海馬CA1錐体細胞にはCI-及びCP-AMPARの両方が発現し、それぞれがシナプス伝達の長期増強現象 (LTP)の異なる局面で重要な役割を持ち、CP-AMPARはLTP初期の神経細胞内へのCa2+透過を担うことが報告されている。しかし正確なCP-AMPARの実体もしくはサブユニット構成は明らかではない。 本年度は、培養細胞の強制発現系を用いて、SDS-FRL法で効率良く検出できるE-tagと抗体の組合せを選定してきた。また、固定法を改善することによりSDS-FRL法においてE-tagが挿入された膜分子を検出効率が改善されることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SDS-FRL法で使用可能な複数のE-tagとE-tag抗体の組み合わせが必要である。既に、GluA1やGluA2のN末端(シグナル配列よりC末端側)にFLAG-tagやHA-tagをノックイン(KI)したマウス(FLAG-GluA1とHA-GluA2)を作製し、光学顕微鏡レベルの免疫組織染色でFLAG-tagを検出した。しかしSDS-FRL法では有意なFLAG-tagの検出が行えなかった。別に作成したFLAG-NAKα3マウスではSDS-FRL法でもFLAG-tagが検出できている。従ってSDS-FRL法によるE-tagの検出過程は、挿入されたE-tag周辺のアミノ酸配列や立体構造の影響を受け、高感度標識を達成するにはE-tag周辺にリンカーを入れる等の工夫が必要であることを示唆している。そこで、培養細胞の強制発現系を用いて、SDS-FRL法で効率良く検出できるE-tagの挿入方法を検討し、高効率検出が可能なE-tagと抗体の組合せを選定してきた。また、通常用いるパラホルムアルデヒド固定液ではなく、別の固定液を使用することによりE-tagが挿入された膜分子をSDS-FRL法において検出効率が改善されることも見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
E-tagをCRISPR/Cas9法を用いて既に目的部位にKIした3種類のマウスの作製を既に成功しており、新しく選定した複数のE-tagとリンカー配列をAMPARの各サブユニットの遺伝子にKIしたマウスを順次作製していく。また、SDS-FRL法によるE-tagの標識効率が最大になる様に実験条件の最適化を行う。具体的には、作製したレプリカ膜に固着していない生体分子を除去するSDS処理の温度や時間、抗体反応の温度や時間、更にE-tag抗体のF(ab)’化やE-tag抗体への金粒子の直接標識などを検討し、標識効率の最適化をはかる。更に、多重KIマウスと、サイズの違う金粒子で修飾された多種類の2次抗体を用いて、2種類以上のサブユニットを同時検出し、AMPARサブユニット構成の多様性を明確にすると共にCa2+透過性AMPAR(CP-AMPAR)の実体とその局在を明らかにする。
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Causes of Carryover |
E-tag(エピトープタグ、FLAGタグやHAタグ等)を目的の分子に導入したマウスの作成を前倒しで行う予定にしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により当初計画していたゲノム編集によるマウス作成に遅れが生じた。その為、当初予定していた予算との間に差が生じた。ようやく新型コロナウイルスの感染も減少の兆しが見え、当初予定をしていたE-tagを導入したマウスの作成を再開し、実験計画を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)