2020 Fiscal Year Research-status Report
マスト細胞の脱顆粒応答は分泌刺激の種類で変化するか?―イメージングによる解析―
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19K07272
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
東尾 浩典 岩手医科大学, 教養教育センター, 講師 (50342837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋野 朝幸 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40305991)
横山 拓矢 岩手医科大学, 医学部, 講師 (70772094)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞生物学 / マスト細胞 / エキソサイトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
マスト細胞は分泌顆粒に様々な生理活性物質を貯留しており、それらは分泌刺激を受けて開口放出される。このマスト細胞の調節性分泌を脱顆粒といい、その分泌様式は(神経伝達のような)教科書的なものとは大きく異なることが形態学的に示唆されている。加えて、分泌刺激の種類によって分泌様式が変化することも示唆されている。本研究ではこれらの4Dイメージングによる実態解明を目指している。昨年度、分泌顆粒局在の膜貫通タンパク質の細胞質側にmCherryを、内腔側にpH感受性GFPバリアントpHluorinを融合した脱顆粒インジケーターを作製し、「分泌顆粒の局在・挙動」と「脱顆粒の有無」を同時に可視化することに成功した。その一方で、mCherryの褪色度合が大きい、脱顆粒の場が分かりにくいという欠点が見出された。 今年度はまず、mCherryのタンデム化と発現量の最適化、および近赤外蛍光タンパク質iRFPを融合した細胞膜マーカーの作製により上記欠点の改善に努めた。その後、分泌刺激の種類を変えて脱顆粒を4Dイメージングしたところ、昨年観察された現象(分泌顆粒は大きなクラスターを形成/一過的なtubule構造を介してクラスター同士が連絡/TPA+A23187刺激時にはクラスター内・間で逐次的に脱顆粒/抗原刺激時にはクラスターを離れた分泌顆粒が細胞辺縁へ移動して脱顆粒)がよりクリアに、細胞内の位置関係も明確になって捉えられた。また意外にも、分泌刺激依存的に、分泌顆粒自体が細胞表層から培地へと放出される現象が見出された。pHluorin蛍光を伴わない分泌顆粒も多く放出されていることから、脱顆粒の有無を問わず放出されていると考えられた。また、放出された分泌顆粒はiRFP蛍光を伴っているものが多く、細胞膜に包まれた状態で放出されている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一つ目の要因はイメージング系の欠点改善に時間を要したことである。脱顆粒インジケーターについては、mCherryのタンデム化によって発現量が低下し、期待した蛍光強度は得られなかった。そこでプロモーターをより強力なものに置換する必要が生じた。また、細胞膜マーカーについても、iRFPをどの細胞膜タンパク質に融合するか、またどのプロモーターを使用するかについて試行錯誤する必要があった。脱顆粒インジケーターと細胞膜マーカーを同時に発現させるため、プロモーター間の干渉についても考慮する必要があった。 二つ目の要因は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からの出張規制である。研究代表者の所属機関(岩手医科大学)の共焦点レーザー顕微鏡 (現有機器LSM510)の性能の問題があり、本研究は、予備実験・条件検討を研究代表者の所属機関にて行い、実際の4Dイメージングは研究協力者の所属機関(理化学研究所・和光本所)に赴いて超解像共焦点ライブイメージング顕微鏡(SCLIM)を用いて行うことを前提として計画している。SCLIMでの観察を夏季(8月)・春季(3月)の年2回、各3~4週間を予定していたが、県および所属研究機関からの出張自粛要請により夏季の研究出張を中止した(春季の研究出張のみ実施)。本来、夏季の観察結果を踏まえた次なる準備・検討を経て春季の観察へ臨む段取りであったため、今年度は当初計画の半分以下の進捗状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
TPA+A23187刺激においては、分泌顆粒クラスターが細胞辺縁を盛り上げるまでに移動しながら逐次的に脱顆粒する。また抗原刺激においては、IgE感作によりクラスターが弛緩し、個々の分泌顆粒が分離しやすくなっているようである。そして抗原刺激が与えられると分泌顆粒は直線的に、またメッシュ状に細胞辺縁へと移動する。加えて、分泌顆粒は分泌刺激依存的に細胞外へ放出される。クラスターや分泌顆粒のダイナミクスの原動力には細胞骨格系が関与している可能性が高いため、これを詳細に検討したうえで、これまでに観察されている現象と共に報告したい。なお、細胞外への分泌顆粒放出については、これまでに知られている細胞外小胞の形成機構とは異なる可能性が高いため、その意義を含めて優先的に解析したい。
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Causes of Carryover |
夏季の研究出張の中止により、1回分の旅費相当額が次年度へ繰越しとなった。また本来、夏季の観察結果を踏まえ、次なる準備・検討を経て春季の観察へ臨む段取りであったため、その準備・検討に係る試薬代(例:細胞骨格阻害剤購入費用・細胞骨格マーカータンパク質購入・構築に係る費用)が次年度へ繰越しとなった。研究進捗状況の回復・改善とともにこれらの次年度使用額は執行される見込みである。
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Research Products
(1 results)