2020 Fiscal Year Research-status Report
咽頭嚢からの胸腺の分離移動を制御するRipply3の機能モチーフと胚葉特異的役割
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19K07274
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大久保 直 北里大学, 医学部, 准教授 (10450719)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胸腺形成 / Ripply3 / ゲノム編集 / WRPWモチーフ / FPVQモチーフ |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスのRipply3は咽頭弓に発現し、咽頭弓分節とそれに続く咽頭嚢からの胸腺形成に必須な遺伝子である。培養細胞を用いた解析から、Ripply3はアダプター分子としてTbx1の転写抑制などに関与すると示唆されるが、生体内での詳細な機能は分かっていない。本研究では、Ripply3の進化的に保存されたアミノ酸モチーフに注目し、変異を導入したノックイン(KI)マウスを作成し、Ripply3 KOマウスの胸腺の表現型と比較することで、各モチーフの機能を顕在化しようと考えた。 Ripply3では、N末端側のWRPWとC末端側のFPVQというモチーフが保存されている。本年度は、WRPWを全てアラニン(AAAA)に置換したWA-KIマウスを作成・系統化し、表現型解析を行った。その結果、 WA-KIホモマウスでは胸腺形成において興味深い異常が観察された。通常胸腺は第3咽頭嚢に形成され、その後咽頭から離れ心臓上部へ移動する。しかしWA-KIホモマウスでは、75%がbilateral型(両側の胸腺の下端が心臓上部まで下りるが上端は咽頭部まで伸びる細長い形)、20%がunilateral型(片側の胸腺は頸部に残存しもう一方の胸腺下端が心臓上部まで下りる)、5%がcervical型(両側とも咽頭部に付着し残存)に分類された。一方、FPVQを全てアラニン(AAAA)に置換したFA-KIマウスでは、67%がcervical型、33%がunilateral型となり、ほぼ100%cervical型であるKOマウスと比べると、胸腺の表現型に顕著な差異が生じた。WRPWはGroucho/TLEなど転写抑制因子との相互作用に、一方 FPVQはTbx1との相互作用に重要であると考えると、各モチーフの変異によりRipply3の転写抑制作用が不安定になったことで、胸腺の表現型の浸透率に差が生じたと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ripply3の進化的に保存された2つのアミノ酸モチーフに変異を導入したKIマウスが完成し、それらの表現型解析が順調に進んだ。各KIマウスの胸腺形成や心臓流出路の形態において顕著な差を見出し、KOマウスとの違いも顕在化できた。
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Strategy for Future Research Activity |
Ripply3 WA-KIおよびFA-KIマウスにおける、胎生8~10日の咽頭弓分節とその後の胸腺形成異常の連関について、組織および遺伝子発現レベルで表現型解析を進める。 Ripply3は、咽頭弓の外胚葉と内胚葉で特異的に発現するが、胚葉特異的なRipply3の機能を解明するため、まず内胚葉特異的なRipply3 欠損マウスの作成を進める。それに先立ち、creマウスおよびRipply3 floxマウスを繁殖させる。また、Ripply3の細胞内局在を明らかにするため、組織レベルで免疫染色が可能なRipply3抗体のスクリーニングを行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大により動物センターの業務内容が変更され、それに伴い飼育頭数や実験の規模を一時的に縮小したため、使用額が減った。今年度は、各ノックインマウスの組織学的解析およびin situ hybridizationによる遺伝子発現解析を進める。また、内胚葉特異的なRipply3欠損マウス作成のため、creマウスを導入し、Ripply3 floxマウスとともに繁殖コロニーを増やす。
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Research Products
(1 results)