2021 Fiscal Year Research-status Report
転写因子 Dach1 による組織特異的な血管内皮細胞分化調節メカニズム
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19K07278
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
早坂 晴子 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70379246)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫組織 / 腫瘍血管 / リンパ節 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定の二次リンパ組織にのみ存在する高内皮細静脈 (HEV) は特殊な血管であり、リンパ球のみを免疫組織実質へ選択的に動員する機能をもつ。研究代表者らの研究から、高内皮細静脈形成を制御する転写因子候補である Dach1 が、リンパ組織HEV形成を調節することが示唆されている。これまでに、Dach1遺伝子恒常的発現マウスに形成される腫瘍において組織内血管が増加し、腫瘍形成が増大することを示す予備的結果を得ている。また昨年度おこなったDach1遺伝子恒常的発現マウス(Dach1-Tg )リンパ節の組織解析研究結果から、 Dach1-Tg成体リンパ節血管内皮細胞がHEV 前駆細胞と類似の分子発現パターンを示すことが明らかになった。本年度は、RNA-Seqを用いて、リンパ組織高内皮細静脈内皮細胞においてDach1が発現調節する遺伝子を同定した。その結果、Dach1-Tg HEV内皮細胞では野生型の約6倍のDach1発現が確認できた。若齢Dach1-Tgと野生型間の遺伝子発現比較から、Dach1-TgのHEV内皮細胞では、HEVに特徴的な接着分子群発現に必要な糖鎖修飾酵素が約60倍発現増加することが明らかになった。またこれらの接着分子群コアタンパク質として知られる分子のひとつが50倍高発現することがわかった。これらの分子はDach1ターゲット候補であり、今後Dach1による転写活性化の可能性を検討する必要がある。 一方、腫瘍血管に対するDach1の関与については、血管特異的Dach1-欠損マウス(cKO )とコントロールの間に統計学的有意差にはいたらなかったものの、Dach1-cKOで腫瘍内血管割合に減少傾向がみられた。腫瘍重量の比較では、Dach1-cKOで有意な減少が見られた 。これらのことから、血管でのDach1 発現は腫瘍内血管形成と腫瘍増殖に促進的に作用する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、Dach1恒常的発現マウスに移植された癌組織で組織内血管が増加し、腫瘍形成が増大することを示す予備的結果を得ていたが、メラノーマではDach1-Tg で コントロールよりも有意に血管形成が亢進したものの、腫瘍増殖については統計学的に有意な増加にはいたらなかった。そこで別のマウス腫瘍細胞であるLewis Lung Carcinoma (LLC)を用いて再検討したところ、血管形成、腫瘍増殖のいずれにおいてもコントロールより有意に増加することが明らかになった。細胞株の変更があったため、当初計画していた、腫瘍内血管形成促進おけるDach1標的遺伝子と経路解析のためのRNA-Seq解析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型マウス、Dach1 恒常的発現マウスに移植した癌組織をコラゲナーゼで消化し、腫瘍増殖の異なるステージにおいて血管マーカーを指標として腫瘍血管内皮細胞を分離する。各細胞についてRNA-seqにより遺伝子発現解析をおこない、Dach1発現による腫瘍血管内皮細胞の遺伝子発現プロファイルの変化を解析する。特に腫瘍血管形成の促進活性をもつ血管関連遺伝子、増殖因子、サイトカインの発現調節に注目し、Dach1による腫瘍血管新生促進経路を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本来RNA-Seq解析用として支出計画していた実験計画が遅れているため、次年度に実験を行い支出することとした。 論文投稿中であり、掲載料として支出計画していた費用が使用されていないため、経費として次年度に繰り越すこととした。
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Research Products
(7 results)