2019 Fiscal Year Research-status Report
胎児心臓においてミトコンドリア機能が心拍動開始時に果たす役割の機序の解明
Project/Area Number |
19K07286
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
當瀬 規嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80192657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 達也 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40592473)
一瀬 信敏 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60448610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 胎児循環 / ミトコンドリア機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は心臓拍動開始前後の胎児心臓原基におけるエネルギー代謝変化の特徴を明らかにすることである。本年度はメタボローム解析による代謝物の網羅的評価と細胞外フラックスアナライザーによる細胞代謝の評価を行った。 メタボローム解析の主成分解析の結果、心臓拍動前の心臓原基ではペントースリン酸系の中間代謝物であるホスホリボシルピロリン酸、解糖系の中間代謝物であるフルクトース6リン酸、フルクトース1,6ビスリン酸が多く、心臓拍動後の心臓原基では、解糖系の副産物であるATP、ペントースリン酸経路の副産物である還元型グルタチオン、GTPが多かった。以上より、心臓拍動後で解糖系およびペントースリン酸経路が活性化していることが示唆された。細胞外フラックスアナライザーにより、単離心臓原基細胞の酸素消費速度(OCR)と細胞外酸性化速度(ECAR)を評価した。心臓拍動後の心臓原基細胞では、心臓拍動前と比して、baseline OCR、ATP-linked OCR、maximal OCRが有意に高く、Baseline ECARには差を示さなかったものの、オリゴマイシン添加後のECARの変化で定義したglycolytic reserveが有意に高かった。以上より、心臓拍動後でミトコンドリア呼吸能と解糖予備能の活性化が示唆された。 心臓拍動開始後の心臓原基細胞は分化・増殖しながらも、酸素利用が限られる環境下で胎児循環を維持するため心臓としての機能を維持し続ける必要があり、特殊な代謝機構の存在が示唆される。本年度の研究結果から、心臓拍動後の心臓原基ではペントースリン酸経路の活性化により核酸や抗酸化物質の生成を担いつつ、解糖とミトコンドリア呼吸能の亢進によりエネルギー需要に応答していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタボローム解析による網羅的評価と細胞外フラックスアナライザーによる細胞機能評価により心臓拍動開始前後の細胞代謝変化の概要が判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね予定通りに進んでおり、今後は、興奮収縮連関の観点から、細胞内カルシウム動態と代謝の変化の関連や、心臓拍動開始の代謝変化の鍵となる分子の探索を行う。
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Causes of Carryover |
心臓拍動開始前後の心筋細胞のミトコンドリア機能の解析については、細胞外フラックスアナライザーを使用する心筋細胞のプレパレーションの条件等が確定され、解析も予定より早く進んでいるため。今後は、興奮収縮連関の観点から、細胞内カルシウム動態と代謝の変化の関連や、心臓拍動開始の代謝変化の鍵となる分子の探索を行う。
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Research Products
(3 results)