2020 Fiscal Year Research-status Report
胎児心臓においてミトコンドリア機能が心拍動開始時に果たす役割の機序の解明
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19K07286
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
當瀬 規嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80192657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 達也 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40592473)
一瀬 信敏 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60448610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 胎児循環 / ミトコンドリア機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は心臓拍動開始前後の心臓原基におけるエネルギー代謝変化の特徴を明らかにすることである。1年目の研究成果より、心臓拍動開始後の心臓原基では、解糖系とペントースリン酸経路が活性化されること、ミトコンドリアの最大呼吸能は増加しないものの、ATP合成と共役する酸素消費が増加することを見出した。2年目である昨年度は、この経路の上流因子の同定および機序探索を行った。まず、解糖系とペントースリン酸経路を同時に制御しうるHIF-1 シグナルに着目した。心臓拍動開始後の心臓原基では、心臓拍動開始前に比して、HIF-1αの転写活性が増加し、HIF-1αの蛋白発現が増加していた。また、HIF-1αの蛋白発現を負に制御するpVHLの発現が心臓拍動後に低下していたことから、pVHLの発現低下を介したHIF-1αの蛋白安定化が、心臓拍動後のHIF-1シグナルの活性化の機序の1つであることが示唆された。HIF-1シグナルはPDK1 の蛋白発現亢進を介してミトコンドリアTCA回路の律速段階であるPDEA1 のSer293のリン酸化を増加させることで、TCA回路およびミトコンドリア呼吸能を負に制御することが報告されている。しかし、PDEA1のSer293リン酸化は心臓拍動開始前後で差を認めなかった。一方、細胞内カルシウムの増加によって発現が亢進し、PDEA1のSer293リン酸化を減少させるPDP1の発現も心臓拍動後に増加していた。以上より、心臓拍動開始後はPDK1とPDP1の双方の発現増加を伴うため、PDH活性を担うPDEA1の発現には変化がなかったことが示唆された。ミトコンドリア電子伝達系の複合体サブユニットの発現は心臓拍動開始前後で差を認めなかった。 これらの成果より、心臓拍動開始にはHIF-1シグナル活性化を介した代謝の制御が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HIF-1シグナルが心臓拍動開始後のエネルギー代謝の中心的役割を果たしていることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね予定通りに進んでおり、成果を論文として報告する。また、最終年度は心臓拍動開始に関わる興奮収縮連関の制御について、エネルギー代謝との関連に着目しながら、詳細を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
1年目の研究成果から、2年目の研究については心臓拍動開始前後のエネルギー代謝変化の特徴についての研究のターゲットとして解糖系とペントースリン酸経路に絞り込んで解析を進めることができたため。次年度の使用計画としては、心臓拍動開始に関わる興奮収縮連関の制御とエネルギー代謝の関連についての研究と、次年度は最終年度であるのでこれまでに得られた研究成果の発表である。
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Research Products
(1 results)