2020 Fiscal Year Research-status Report
培養HL-1心筋細胞とその数理モデルを用いた心筋システム制御理論の構築と実証
Project/Area Number |
19K07290
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
倉田 康孝 金沢医科大学, 医学部, 教授 (00267725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
九田 裕一 金沢医科大学, 医学部, 講師 (50566916)
津元 国親 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (70353331)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | システム生理学 / 非線形力学 / 分岐理論 / 生物・生体工学 / 生物物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、培養HL-1マウス心房筋細胞の実験系とその電気生理学的特性を記述する数理モデルを用い、非線形システムである心筋細胞・組織の電気現象を理論的解析データに基づいて合理的に制御できることを証明することである。初年度(2019年度)は、異常自動能・興奮伝導異常を再現できるパッチクランプおよび蛍光電位・Ca2+濃度測定の実験システムとHL-1細胞の数理モデルを構築した。今年度(2020年度)は、前年度に作成したHL-1細胞モデルを用いて異常自動能(脱分極誘発自動能および早期後脱分極)発現制御解析のための分岐現象解析システム(MALTABプログラム)を構築し、HL-1細胞における脱分極誘発自動能および早期後脱分極が分岐現象によって生じること、異常自動能制御の方法を分岐制御の問題として体系的に解析・解明できることを証明した。また、脱分極誘発自動能(ペースメーカー活性)の制御には内向き整流K+チャネル電流の抑制あるいは過分極活性化陽イオンチャネルの導入が有効であることを実験的に証明し、さらに、早期後脱分極の抑制にはL型Ca2+チャネル電流あるいは一過性外向きK+チャネル電流の抑制が有効であることを証明した。興奮伝導異常の解析についても、蛍光測光システムによる実験的解析を進め、遅延整流K+チャネル電流修飾薬および内向き整流K+チャネル遺伝子発現制御により興奮伝導異常(リエントリー)の誘発と抑制が可能であることを見出した。さらに、心筋組織モデルの改良も進め、シミュレーションによる興奮伝導異常の理論的解析を効率化して、組織モデルが実験データを再現できることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の到達目標は、1)前年度(2019年度)に構築した実験系と理論的解析システムを用い、実験結果とシミュレーション結果の整合性を検証するとともに、異常自動能・興奮伝導異常の発現条件・機序をさらに精密に解析し、その発現制御方法を分岐理論に基づいて解析すること、2)蛍光測定装置などの実験系を改良してより精密な解析を可能にするとともに、数理モデルの実験的検証に基づく改良、モデル細胞の分岐解析による異常自動能のパラメータ依存性に関するより体系的な解析を行うことであった。 研究実績の概要に記載した通り、理論的解析については当初の到達目標を概ね達成している。薬品などの消耗品の入荷が遅れ、2020年度後半に予定していた実験の一部が先送り(2021年度に移行)となったが、現在イオンチャネル遺伝子発現制御による脱分極誘発自動能・早期後脱分極発現制御が実際に可能であることを証明すべくより体系的な実験的検証を進めており、ほぼ予定通りに成果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019~2020年度で、異常自動能・興奮伝導異常を誘発・制御できる実験系とHL-1心筋細胞の分岐現象を解析するためのモデルシステムを構築し、異常自動能・興奮伝導異常の発生機序を分岐現象として理論的に理解し実験的に再現することを可能にした。2021度には、実験的検証に基づく細胞モデルのさらなる改良と2次元組織(細胞シート)モデルの作成・改良を行い、組織レベルでの興奮生成・伝導のシミュレーション解析により、異常自動能・興奮伝導異常の発現条件・機序とその制御方法をより精密かつ体系的に解析する。さらに、HL-1細胞を用いて細胞シートを作製し、異常自動能の発現に伴う興奮生成・伝導異常の発現機構と合理的制御方法の組織レベル解析、理論的解析結果との整合性の比較解析を行い、理論的に得られた合理的制御方法の実験的検証を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大により、予定していた学術集会(日本不整脈心電学会、日本病態生理学会、中部日本生理学会、日本生理学会大会)が2021年度に延期またはウェブ開催となり、計上していた旅費が不要となった。また、実験用消耗品の入荷の遅延により、2020年度後半に予定していた実験の一部を先送り(2021年度に移行)せざるを得なくなった。残額は2021年度に実験設備補強・拡充および実験用消耗品購入に使用する。
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Research Products
(4 results)