2021 Fiscal Year Annual Research Report
感覚経験がげっ歯類視覚誘導性の恐怖反応に与える影響の神経基盤
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19K07293
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
鳴島 円 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 准教授 (30596177)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 上丘 / 恐怖反応 / 光刺激 / シナプス / 可塑性 / 視覚経験 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は前年までと同様、視覚誘導性の恐怖反応および基盤となる神経回路の可塑性を解明するための行動学的実験および電気生理学的実験を行った。行動学的実験では、侵害的な視覚刺激に対する恐怖反応の発達過程の解析を開眼直後の生後16日齢から60日齢までで行い、行動様式の比較と視覚経験の操作の影響を調べた。その結果、これまで生来的な行動だと考えられていた恐怖反応が発達期に視覚経験に依存して獲得されることを初めて明らかにした。恐怖反応のうちフリージング反応が開眼直後からすでに観察されるのに対し、逃避反応は生後21日齢と生後28日齢の間で急激に増加した。この時期に暗室飼育を行って視覚経験を遮断すると、逃避反応が獲得されず、代わりにフリージング反応の出現率が増加した。逃避反応の発達は、暗室飼育後1週間の視覚経験のみでは回復しなかったが、暗室飼育終了直後に視覚刺激を経験し、さらに1週間通常環境で飼育することで獲得された。上記の成果は論文として発表した(Narushima et al., Journal of Physiological Sciences, 2022)。また、電気生理学的実験では、引き続き視覚誘導性の恐怖反応に関わる上丘ニューロンを標識し、選択的に電気生理学的記録を行う手法を用いて、上丘ニューロンへのシナプス入力の解析を行った。前年から行っていた網膜由来と大脳皮質由来入力の性質を比較するために薬理学的実験では、ノルアドレナリンが逃避反応をトリガーするPBGN投射上丘ニューロンへの大脳皮質由来の興奮性入力を、β受容体を介して増強するのに対し、網膜由来入力に対してはほぼ影響しないことが分かった。ノルアドレナリンは逃避反応の潜時を早める効果が報告されているため、この行動に対する効果が大脳皮質由来入力の増強作用によることが示唆された。
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