2019 Fiscal Year Annual Research Report
Activity-dependent growth of dendritic spines for memory consolidation
Project/Area Number |
19K07294
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平井 大地 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 訪問研究員 (40746939)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 5層錐体細胞 / 樹状突起 / 樹状突起スパイク / シナプス可塑性 / スパイン / トップダウン入力 / 睡眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠には記憶を固定化する役割があり、その機構の破綻は日常生活に広範な支障を及ぼすことから、近年注目が集まっている。これまでの研究から、記憶の基盤となっているのは、シナプスにおける長期増強というメカニズムであると考えられる。大脳皮質では、興奮性シナプスの大半が樹状突起のスパイン上に形成され、スパインは記憶・学習に伴い形態が変化しシナプス伝達効率を変化させることから、記憶を固定化する細胞基盤と考えられてきた。一方で、研究代表者らは「睡眠時に脳で自発的に生成されるトップダウン入力が記憶の固定化に重要であること」を近年明らかにしており、本研究では、トップダウン入力の主要な受け手である感覚野の錐体細胞の樹状突起活動に着目した。はじめに、2光子励起イメージングにより樹状突起活動を記録したところ、学習直後の睡眠時、樹状突起スパイクと思われる大きなカルシウム活動が観察された。樹状突起スパイクの発生には、電位依存型カルシウムチャネルが関連している。そのため、スパイクの発生は細胞内カルシウムイオン濃度上昇を引き起こし、学習に関連する神経可塑性を引き起こす。そこで、学習によって活性化した樹状突起において樹状突起上のスパインの形態変化を追跡したところ、学習を経験した群では対照群に比べて、増大したスパインの比率がより大きかった。さらに、新規に開発されたシナプスプローブAS-PaRac1を用いて、学習直後に新生・増大したスパインだけを標識し、これらを特異的に光遺伝学的手法により縮退させたところ、翌日の記憶テストの成績が低下した。一連の研究から、「トップダウン入力を受けやすい5層錐体細胞の樹状突起は、学習直後のノンレム睡眠時に樹状突起スパイクを発生させ、スパインの形成や増大などの可塑性を誘導することで、最終的に記憶が固定化する」という背景メカニズムを示唆する結果が得られた。
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