2019 Fiscal Year Research-status Report
心不全病態の形成におけるジャンクトフィリン分解の役割
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19K07299
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中田 勉 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (70452141)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジャンクトフィリン2 / 心不全 / 興奮収縮連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、心不全病態の形成において、ジャンクトフィリン2(JP2)の分解とその産物がどのような役割を果たすかについて検討を行っている。 心筋の収縮の引き金となる細胞内カルシウム上昇は、形質膜上のL型カルシウムチャネルと、筋小胞体膜上のリアノジン受容体が機能的に連関して引き起こされる。JP2は、形質膜と筋小胞体膜を架橋し、結合膜構造とよばれる興奮収縮連関の場を作る重要な役割を果たしている。複数の研究グループによって、心不全病態でJP2のC末端が分解されることが報告されているが、病態における意義については不明な点が多い。 本年度は、マウスの心臓にJP2の分解産物と類似構造を持つ変異体(JP2ΔCT)を強制発現する実験を行った。JP2ΔCTの上流にトロポニンTプロモーターを持つDNA配列を作製し、アデノ随伴ウイルスベクターを組み込んだ。精製したウイルスベクターは2 x 10^12 vg/マウスの量で腹腔内に投与した。投与4週間後に免疫染色およびウェスタンブロット法を行ったところ、心筋でのJP2ΔCTの強い発現が確認できた。また、同時期に心重量を測定したところ、有意な増加が認められた。一方、肺重量、脈拍、血圧についてはコントロールと比べて有意な変化は見られなかった。心エコーでの解析を行ったところ、20%程度の心収縮力の有意な減少が認められた。また、定量性PCR法にてナトリウム利尿ペプチドmRNAの増加が観察された。 これらの結果はJP2ΔCTの強制発現が心機能の低下を誘導することを示唆しており、そのメカニズムについて現在詳細な検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アデノ随伴ウイルスベクターによるJP2ΔCTの発現系が確立できたことや、心機能低下が観察されたことなどから、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
JP2ΔCTを強制発現することでマウス心機能の低下が観察されたことから、その詳細なメカニズムについて検討を行う。生理学的側面としては、カルシウムイメージング、パッチクランプ法によるカルシウム動態異常について解析を行う。また、分子生物学的な側面から、ウェスタンブロッティング法、共免疫沈降法などにより、イオンチャネルなどのタンパク質の発現量、相互作用について検討を行う。
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