2020 Fiscal Year Research-status Report
心不全病態の形成におけるジャンクトフィリン分解の役割
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19K07299
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中田 勉 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (70452141)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジャンクトフィリン2 / 心不全 / 興奮収縮連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、心不全病態の形成において、ジャンクトフィリン2(JP2)の分解とその産物がどのような役割を果たすかについて検討を行っている。心筋の収縮の引き金となる細胞内カルシウム上昇は、形質膜上のL型カルシウムチャネルと、筋小胞体膜上のリアノジン受容体が機能的に連関して引き起こされる。JP2は、形質膜と筋小胞体膜を架橋し、結合膜構造とよばれる興奮収縮連関の場を作る重要な役割を果たしている。 昨年度までに、マウス心臓にJP2の分解産物と類似構造を持つ変異体(JP2ΔCT)を強制発現すると、心重量の有意な増加、20%程度の心収縮力の有意な減少が起こることを確認している。本年度は同モデルの心室筋細胞を単離し、細胞レベルでの解析を行なった。単離心筋細胞に蛍光指示薬Fluo-4を取り込ませ、電気刺激に伴うカルシウムトランジェントを測定したところ、JP2ΔCTを強制発現したマウスでは、一過性カルシウム上昇の低下が認められた。次に、免疫細胞染色によって関連分子の局在を解析した。その結果、強制発現したJP2ΔCTは表面細胞膜に強く分布することが明らかとなった。また、同時にL 型カルシウムチャネルの主サブユニットであるCaV1.2の局在について検討した。通常CaV1.2はT管上と表面細胞膜上の両方に分布しているが、JP2ΔCTを強制発現した心筋細胞では、表面細胞膜上での発現が増加していた。 これらの結果は、JP2ΔCTがL型カルシウムチャネルの正常な細胞内局在を乱すことで、カルシウム誘導性カルシウム放出を阻害することを示唆しており、これが心機能低下に関係していることが考えられる。現在、より詳細な分子メカニズムについて解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単離心筋を用いたカルシウムイメージング、免疫染色方法による解析を行なうことで、JP2ΔCTの強制発現による心機能低下メカニズムについて一定の知見が得られた。さらにパッチクランプ法による電気生理学的解析を行う予定であったが、条件検討に想定より長い期間が必要となったため、やや進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
JP2ΔCTを強制発現することでマウス心機能の低下が観察されたことから、その詳細なメカニズムについて検討を行う。生理学的側面としては、パッチクランプ法によるカルシウム動態異常について解析を行う。また、分子生物学的な側面から、ウェスタンブロッティング法、共免疫沈降法などにより、イオンチャネルなどのタンパク質の発現量、相互作用について検討を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため、移動制限による出張費の減少、機関の入構制限による実験計画の遅れなどにより次年度使用額が生じた。当該額は次年度の消耗品購入に充てる予定である。
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