2021 Fiscal Year Research-status Report
希少糖を用いたナトリウム・グルコース共輸送体の糖透過性の分子構造基盤解析
Project/Area Number |
19K07301
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
神鳥 和代 香川大学, 医学部, 助教 (40457338)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 祐一郎 香川大学, 医学部, 教授 (20532980)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | SGLT / 電気生理学 / 分子モデリング / 希少糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)は、小腸や腎臓で糖の吸収を担っている一方、癌細胞で高発現し、過剰なグルコース取り込みおよび細胞増殖に寄与しており、糖尿病や癌の診断・治療法のターゲットとして臨床的にも注目されている。ヒトの7つのSGLT (hSGLT1-7) の糖選択性は機能や分布により異なっている。どの糖が結合し、輸送されるかは糖結合サイトを形成するアミノ酸配列により決定され、そのメカニズムを解析することは阻害剤の設計などへの重要な知見となりうる。本研究では、SGLTの糖選択性についてアフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的手法により解析している。昨年度までにhSGLT1がグルコース、ガラクトースに加えて、希少糖(自然界に稀に存在する単糖)の1種であるアロースが輸送されることを明らかにした。さらに糖結合部位付近の変異体を作成し、その中でT287N, Y290C, およびK321Qは糖選択性が変化し、さらにT287A/Y290Cの2重変異体がグルコースとマンノースを輸送するという結果が得られた。 今年度はさらにhSGLT1のH83L/T287A/Y290Cの3重変異体がグルコース、マンノースに加えてフラクトース、L-ソルボースを輸送することを明らかにした。この変異体は、糖結合部位のアミノ酸配列がhSGLT4(グルコース、マンノース、フラクトースを輸送)と一致しており、これらの配列が糖特異性を決定することを裏付ける結果である。また分子モデリングによりこの3重変異体とそれぞれの糖との結合様式を示し、フラクトースは六員環構造で結合していることを示した。さらに、糖ラベル体の取り込みを測定することにより、電気生理学実験の結果を検証する手法を確立した。以上の結果や手法は、広くトランスポーターの基質予測やその阻害剤の設計にも役立つ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
hSGLT1の糖輸送の選択性について電気生理学的手法を用いて解析し、これまで知られているグルコース、ガラクトースに加えて、希少糖の1種であるアロースも輸送することを明らかにした。また糖結合に関与すると予測されるアミノ酸の変異体による糖輸送能を解析し、複数の変異体で野生型とは異なる糖選択性が観察された。その中でビブリオ由来vSGLT(ガラクトースのみを輸送)とアミノ酸配列が近いT287Nは、グルコース輸送能が低下して糖特異性がvSGLTと類似していた。また hSGLT4と配列が近いT287A/Y290Cはマンノース、さらにH83L/ T287A/Y290CはフラクトースとL-ソルボースの輸送能を獲得し、糖特異性はSGLT4と類似していた。さらに野生型hSGLT1と各変異体について、輸送される糖との親和性を解析し、実験結果と分子モデリングから糖の結合様式を明らかにした。 以上の解析に加え、hSGLT1の蛍光分子観測(VCF)法により糖が結合した際の構造変化の検討を行っている。 またhSGLT1以外のアイソフォーム、および他の種由来SGLTの電気生理学的解析を検討し、その中でhSGLT2を含む複数の輸送体の測定法を確立した。それぞれのSGLTの糖特異性、アミノ酸配列の比較を基に変異体を作製し、輸送される糖の変化を解析している。また糖ラベル体によるトレーサー法、および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の利用(香川大学農学部との共同研究)により、新たな糖取り込み測定法を確立した。予定通り、おおむね順調な進捗である。
|
Strategy for Future Research Activity |
それぞれのSGLTのアミノ酸配列、糖特異性の比較から、糖選択性が変化すると予想される変異体を作製し、糖輸送能を解析する。またこれまで解析した変異体も含めて、VCF法により糖が結合した際のSGLTの構造変化を解析する。さらに今年度確立したトレーサーおよびHPLCを用いた糖輸送能の測定法も駆使し、SGLTによる糖輸送能や阻害剤の効果を網羅的に解析していく。これらの実験結果と分子モデリングにより、hSGLT1だけではなくSGLTファミリー全体の糖輸送および糖選択性や阻害剤の効果の分子メカニズムを、詳細に明らかにすることを目標とする。以上の展開により、SGLTをターゲットとした糖尿病や癌の診断・治療・予防法へつなげ、その中で希少糖を利用する可能性も提案する。
|
Causes of Carryover |
2020,2021年度は国内外の状況により、学会出張等の旅費支出がなくなった。次年度は研究を完結、さらに発展させるための消耗品購入費、論文校閲費、学会出張旅費として使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)