2020 Fiscal Year Research-status Report
がんー間質相互作用におけるがん幹細胞維持機構の解析と新規抗がん剤の探索及び開発
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19K07311
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
立田 大輔 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (20442569)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / がんー間質相互作用 / 難治がん / オルガノイド培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
(令和2年度の研究成果の具体的内容)難治がんや既存の抗がん剤に耐性となったがんに対する新しいがん治療薬の創製を目的としてがんー間質相互作用によるがん幹細胞に与える影響を明らかにする。肺がんやすい臓がん細胞の3D増殖を促進する間質細胞由来の因子について解析した結果、間質細胞の分泌タンパク質であることが示唆された。3D培養について低接着プレートでがん細胞と間質細胞を添加するスフェロイド培養に加えて、in vivoでの腫瘍組織を模倣するオルガノイド培養法を我々は開発した。化合物ライブラリーを用いたスクリーニングにおいてすい臓がん細胞と間質細胞との共培養で2Dあるいは3Dで単独培養に比べて薬剤感受性が変化する化合物を見出した。 (令和2年度の研究成果の意義)がん細胞の3D増殖を促進する間質細胞因子はその候補タンパク質を見出しており、すい臓や肺のがん幹細胞の増殖メカニズムの解析に繋がる。また、化合物ライブラリーによって見出された感受性変化する化合物についてはその因子の同定や薬剤開発へと繋がる。オルガノイド培養法の開発はin vivoでの腫瘍組織中の相互作用を理解するために有用なツールとなる。今年度の研究成果は我々の開発した評価系の活用によって新規性の高い結果を見出すことを示唆する意義のある成果である。 (令和2年度の成果の重要性)がん細胞の3D増殖を促進する因子は報告が少なく新規性が非常に高い。がん細胞と間質細胞の共培養による薬剤感受性の変化はその因子の同定に繋がれば新規のがん治療薬の標的になる可能性がある。新しく開発したオルガノイド培養法はin vivoの腫瘍状態のモデルとなり薬剤の効果や組織内の細胞同士の相互作用を理解することが可能である。これらの成果は新規性の高いがん治療薬の標的候補の発見と腫瘍組織を理解する新しいツールの確立に繋がる重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(現在までの進捗状況) 我々の開発した分泌型ルシフェラーゼを発現するがん細胞株を用いた系によってすい臓がんだけでなく肺がんでも3D培養の増殖を評価できたことから、種々のがんで評価可能であることを実証できた。この評価系をはじめ低接着プレートを用いて間質細胞ががん細胞の増殖の促進を解析できたことによってその候補因子を見出すことに成功している。またがん細胞と間質細胞の共培養によって薬剤感受性の変化する化合物についても2D培養だけでなく3D培養においてもその因子の探索が可能となり、化合物ライブラリーからは2Dでの共培養によって薬剤感受性の変化する化合物を見出し、がん細胞の3D増殖を指標としたがん幹細胞の増殖抑制スクリーンニングでは微生物の産生する代謝産物からはヒットは見出されていないが化合物ライブラリーからは複数の化合物が見出されている。オルガノイド培養法の開発によってスフェロイド培養との増殖や薬剤感受性の比較、スフェロイド培養では困難なin vivoでの腫瘍組織の状況比較が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の研究の推進方策) 昨年度の研究で明らかになった成果をさらに詳細に解明するために本研究を推進する。がん細胞の3D増殖を促進する間質細胞由来の分泌因子は精製、LC-MSによる解析から候補タンパク質が見出されている。これらの候補タンパク質を添加、または間質細胞でノックダウンすることでがん細胞の3D増殖の変化を解析する。3D増殖を促進する間質細胞由来の因子が同定された際には、すい臓がんや肺がんでの3D増殖に加えてがん幹細胞マーカーの発現変化、増殖メカニズム等を解析する。がん細胞と間質細胞との共培養によって薬剤感受性が変化する因子についてはLC-MSを用いた分画やサイトカインアレイによって候補因子を見出す。がん幹細胞の増殖を抑制するスクリーニングについては引き続き化合物ライブラリーや微生物の産生する代謝産物から低接着プレートでがん幹細胞の増殖を抑制する化合物のスクリーニングを行う。昨年度、化合物ライブラリーから見出された化合物については薬剤濃度や2D培養との単独培養、共培養との比較だけでなく我々の開発したオルガノイド培養法での薬剤感受性との比較も検討する。オルガノイド培養法で作成したオルガノイドについて組織切片を作成し、in vivoの組織切片との比較、がん幹細胞の分布や間質細胞との位置関係などを免疫染色で確認する。
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