2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of molecular mechanism of cognitive dysfunction associated with sepsis and approach to new therapeutic agents
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19K07314
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
入鹿山 容子 千葉大学, 真菌医学研究センター, 特任講師 (90312834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桜井 武 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60251055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 敗血症 / 脳波 / 全身性炎症 / オレキシン / セボフルラン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本を含む先進国では、高齢化に伴う感染症や手術後の精神疾患、不眠症、認知症などの発症率が増加している。特に高齢者は細菌感染による敗血症などの全身性炎症を起こしやすく、これが脳の炎症反応を引き起こし、認知機能の低下につながることがある。また、集中治療室(ICU)にいる患者は麻酔や鎮静剤の影響で睡眠が乱れ、せん妄を引き起こすことが多く、これも認知機能の低下や生活の質の低下につながるとされている。 認知機能の低下した脳では徐波睡眠が増加し、高周波脳波が減少することが知られており、これがせん妄の予測因子となる可能性がある。 今年度は、全身性炎症モデルマウスを用いて、吸入麻酔薬であるセボフルランのプレコンディショニングが、炎症下で低下する高周波脳波であるα,β波へ及ぼす効果を調べた。また、マウスの巣づくり行動と高周波脳波の改善には正の相関があると報告されており(David C. Consoli, Brain Behvior, and Immunity, 2023)、炎症下での巣作り行動を脳波と同時に評価した。 全身性炎症モデルマウスにおいて、セボフルランプレコンディショニングにより、レム睡眠の回復、高周波脳波の早期回復が観察された。さらに巣作り行動も早期に回復した。これらの結果から、全身性炎症が関与する病態において、セボフルランが認知機能の改善に寄与する可能性や、脳波が認知機能評価の指標となる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍における実験の制限や、研究棟の引っ越しなどの影響でセットアップが遅れ、全体的に研究の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で、全身性炎症下における睡眠リズムの再構築に、吸入麻酔薬であるセボフルランが有効であることを発見し(J Sleep Res, 2022)、全身性炎症で乱れた睡眠のリズムを整えることで、炎症後の認知機能を改善する可能性があることを見出した。 次年度は①老齢マウスを用いて、炎症下での脳波・巣作り行動を指標として、セボフルランプレコンディショニングによる睡眠・認知機能の回復がみられるかどうかの検証を行う。②同様に新規オレキシン受容体作動薬・阻害薬を用いて、睡眠・覚醒リズムに介入することで、全身性炎症病態でみられる活動低下や認知機能が改善されるかを検討する。 ③全身性炎症下におけるセボフルラン、オレキシン関連物質の睡眠・行動回復に関わる脳内遺伝子を網羅的に解析し、新規制御因子の探索を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍での実験の制限や、研究棟などの移転で全体的に研究の遅れが生じたため。 使用計画としては、全身性炎症モデルマウスを作成し脳波測定、行動観察をするために野生型マウスを購入する。また脳波測定のための電極などの消耗品、トランスクリプトーム解析のためのRNA抽出試薬などの購入に使用予定である。
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Research Products
(4 results)