2019 Fiscal Year Research-status Report
悪性グリオーマの浸潤性を標的とし、受容体を中心に据えた分子治療戦略の基礎構築
Project/Area Number |
19K07323
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
飯島 幹雄 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (00305111)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 昭世 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50274064)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | グリオーマ / 浸潤能 / Wnt / RYK / MMP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、悪性グリオーマの高い浸潤能を標的とし、受容体を中心に据えた分子治療戦略の基礎を構築することである。グリオーマの予後不良の主要因となる高い浸潤能を抑えることができれば、予後が改善し余命を伸ばすことが期待できる。悪性グリオーマの高い浸潤能には、細胞外マトリクスの分解に働くMMP-2の発現亢進が重要な役割を担っている。そのため、MMP阻害薬の開発が多数試みられてきた。しかし、関節痛や筋肉痛などの重篤な副作用等のため、MMP阻害薬開発は頓挫し現在までに医薬品としての承認を受けたものはない。申請者らは、グリオーマ細胞において、Wnt-5a/RYKシグナルによりMMP-2の発現が増大することを見いだした。このMMP-2の発現増大メカニズムは、グリオーマに対する新たな治療戦略になり得ると考えた。シグナルメカニズムの解明には、タンパク質同士の相互作用に基づいた探索は不可欠であるが、従来の方法では、RYKに関して目立った成果が上がっていない。申請者らは、この限界を打破するため、検出力の高い酵母two-hybridシステムを用いることとした。さらに、受容体を標的とした酵母two-hybridシステムで起こりうる検出力低下を避けるため、機能性ドメインを含む断片化cDNAライブラリーを使用することにした。これにより、膜タンパク質やオルガネラタンパク質を含めた網羅的かつ効果的なスクリーニングが可能となる(特許出願中)。RYK受容体の細胞内ドメインを標的として、マウス脳由来の断片化cDNAライブラリーを特許出願中の方法に従って、スクリーニングした。現在、ヒト細胞株由来断片化cDNAライブラリーを用いたスクリーニングをおこなうと共に、すでに得られた陽性クローンの解析を進行中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度は、RYK受容体の細胞内ドメインを標的として、断片化cDNAライブラリーを酵母two-hybridシステムを用いてスクリーニングした。マウス脳由来断片化cDNAライブラリーのスクリーニングでは、約400万クローンを対象として行い、陽性クローンを選択した。この間の煩雑なスクリーニング操作による負担を、実験補助者の参加により軽減させようとしたが、適切な人材の採用ができなかった。そのため、研究初年度でスクリーニング対象をマウス脳由来断片化cDNAライブラリーにとどまらず、ヒト細胞株由来断片化cDNAライブラリーに広げることができなかった。現在、陽性クローンの解析とスクリーニングを続行中であり、当初の計画よりやや遅れてしまった。以上により本研究課題の進捗状況を、やや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
スクリーニング方法は、計画初年度の結果から、十分確立できたと考えている。しかしながら、スクリーニング対象をマウス脳由来断片化cDNAライブラリー以外に広げることができなかった。計画二年目である令和2年度では、ヒト細胞株由来断片化cDNAライブラリーはすでに作製済みなので、スクリーニング対象を広げることにより、より網羅的なスクリーニングを行う。効率的なライブラリー作製技術ならびにスクリーニング方法は確立できており、すでに得られた陽性クローンについても解析をおこなっているので、進捗状況の遅れは十分に挽回できるものと思われる。
|
Causes of Carryover |
計画初年度に予定した研究補助員の採用に関して、適切な人材が得られなかったため、人件費・謝金として計上した208,000円が未執行となった。それに伴い物品費の使用量が少なくなった。さらに、昨年12月に予定した学会出張は、研究代表者の入院加療により取りやめたため旅費として計上した124,000円が未執行となった。これらに伴い、その他の支出も見送ったため、次年度使用額602,929円が発生した。次年度では、スクリーニング対象を拡大する予定なので、それに伴った物品費等の使用増大が見込めるため、年度内に研究費の執行が達成できると考えている。
|