2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of therapeutic basis for allergic diseases targeting P2X4 receptor of mast cells
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19K07328
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
松岡 功 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (10145633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 政明 高崎健康福祉大学, 薬学部, 講師 (30438759)
吉田 一貴 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (70803154)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ATP / P2X4受容体 / マスト細胞 / アレルギー疾患 / ヒトiPS細胞 / IgE / プロスタグランジンE2 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、細胞外ATP によるP2X4受容体シグナルがアレルギー疾患の調節因子として重要な役割を果たす事を見出し、本研究では1)P2X4受容体を介するマスト細胞の活性化の機序を分子レベルで詳細に検討する、2)P2X4受容体シグナルを標的とした治療戦略が、アレルギー疾患に応用できるか検討する、3)マウスで得られた知見がヒトでも成立するかを、研究材料としてヒトiPS細胞からマスト細胞を作成し検討する、4)P2X4受容体またはシグナル伝達系を評価するアッセイ系を確立し、新規阻害薬を探索する、という課題を設定し、当該年度は、1)、2)を中心に検討し、3)についても予備的な検討を行った。P2X4受容体を介するマスト細胞の活性化の機序については、野生型とP2X4受容体ノックアウトマウスから作成したマスト細胞の機能を比較しながら検討し、細胞外ATPはそれ自身ではマスト細胞の細胞内顆粒の放出を刺激しないが、微量な抗原が存在すると顕著な脱顆粒反応を引き起こし、その作用はP2X4受容体のイオンチャンル活性には依存しない機序で、抗原のシグナル伝達を亢進させることを見出した。また、ATPは同じP2X4受容体を介して抗原がない条件でもPGE2やアデノシンなどGi蛋白共役型受容体の刺激効果と相乗的に働いてマスト細胞の脱顆粒反応を著しく亢進させた。この反応はGi共役型受容体を介するPI3キナーゼに依存して、P2X4受容体のチャネル活性が増大するためで、抗原刺激時に認められた機序とは異なる事が示唆された。機序は異なるものの、P2X4受容体刺激による抗原やGi共役型受容体を介するマスト細胞の機能亢進は、マウス個体レベルのアレルギー性血管透過性亢進や、全身アナフィラキシー反応の亢進として認められた。3)のヒトiPS細胞からのマスト細胞の調整は、文献を参考にした方法では細胞が調整出来ず、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス骨髄由来細胞を用いた実験およびP2X4受容体ノックアウトマウスを用いた生体でのアレルギー反応を指標とした実験では、当初の計画通りの研究成果を得ることが出来たが、ヒトiPS細胞からのマスト細胞の調整は現在は成功していない。すなわち、Igarashiら(Allergy Int 2016)の方法により、ヒトiPS細胞からマスト細胞への分化を試み、約50日の分化誘導の後、トルイジンブルーによる染色が認められ、FACSを用いてマスト細胞マーカーのc-kitおよびFcεR1の発現を検討したが、明確な分化マーカーの発現増強は認められていない。また、分化誘導の過程において死細胞も多く認められることからさらなる改善が必要であると思われた。そこで、ヒトCD34陽性骨髄由来造血幹細胞を用いて、Saitoら(Nat Protoc 2006)の方法によりマスト細胞への分化を試みた。この方法では、更に長期間の培養が必要で約80日の分化誘導後、トルイジンブルーによる染色が認められ、c-kitおよびFcεR1の発現も認められた。そこで、この細胞の抗原に対する脱顆粒反応をCD63を指標に検討したが、明確な応答は認められなかった。今後、β-ヘキソサミニダーゼの活性測定なども含めて脱顆粒の条件を検討し、マスト細胞機能を継続して評価する。これまでの状況から判明したことは、ヒトマスト細胞の作製には長時間の培養に加え、その過程で高価な多くのサイトカインが必要で、根本的な見直しが必要と思われた。ヒトマスト細胞での検討は、マウスの実験系で得られた成果をヒトに応用するためには、P2X4受容体を介する反応が、種差を超えて共通であるかを明らかにする必要がある。そこで、今後はヒトP2X4受容体発現系を構築し、P2X4受容体ノックアウトマウスから調製したマスト細胞に強制発現させ、機能を解析する事を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトマスト細胞の調整を継続して行い、抗原刺激による脱顆粒反応を示す細胞が得られれば、P2受容体の発現様式を検討し、P2X4受容体の発現が確認できれば、抗原刺激およびGi共役型受容体刺激に及ぼすATPの作用を検討する。また、ATPに対する応答が確認できればP2X4受容体阻害薬、siRNAを用いたP2X4受容体ノックダウン細胞を調整し、P2X4受容体の役割がヒトマスト細胞でも認められるかを検討する。この細胞の調整に時間がかかる場合は、ヒトP2X4受容体発現ベクターを構築し、培養細胞に発現させヒトP2X4受容体のシグナル伝達を解析する。さらに、P2X4受容体ノックアウトマウスから作成したマスト細胞に、ヒトP2X4受容体を発現させ、抗原に対する脱顆粒反応に及ぼす作用を検討する。アレルギー反応を示すモデル系ではP2X4受容体ノックアウトマウスにおいては明確なアレルギー反応の軽減が認められた。そこで、次はP2X4受容体阻害薬の効果を検討し、P2X4受容体がアレルギー疾患の治療標的になるかを検証する。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた日本薬理学会および日本薬学会の旅費が、学会の誌上開催になり使用しなかったため。
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