2020 Fiscal Year Research-status Report
遺伝コード拡張法を用いたアセチルコリン受容体の構造変化の研究
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19K07334
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
坂田 宗平 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (40528006)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アセチルコリン受容体 / 立体構造変化 / 非天然アミノ酸 / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)は運動神経と骨格筋が形成する神経筋接合部において骨格筋側に発現し、運動神経終末から放出されるアセチルコリンを受容すると、チャネルゲートが開きイオンを透過させるリガンド作動性のイオンチャネルである。本研究課題では神経からの信号が筋に伝わるメカニズムの理解を深めるため、筋側の信号を受容するAChRがリガンドと結合したのち、どのようにチャネルゲートを開けるのか明らかにすることを最終的な目的としている。これまでの研究によりAChRに作用する多くの化学物質が存在することが知られており、AChRの機能を阻害する物質も存在する。本研究課題では機能を阻害する物質が結合する場所を同定することで、逆にAChRが機能するのに重要な部位を明らかにすることを目指す。これまでに速筋で発現しているイプシロンサブユニットを含むタイプのAChR(ε型)とデルタサブユニットを2つ持つタイプ(δ型)のAChRに対し、種々の阻害剤を作用させたところ、麻酔薬として用いられるpancuroniumと呼ばれる阻害剤が作用する濃度が異なることを見出した。そこでε型とδ型受容体の間でキメラタンパク質を作成し、それらの阻害剤が作用する濃度を調べることで受容体のどの部分に阻害剤が結合するか明らかにできると考えた。様々なキメラタンパク質を作成し一つ一つ阻害剤が作用する濃度を調べたところ、AChRの細胞内部分に阻害剤が作用していることを明らかにした。細胞内部分は立体構造が分かっていない部分も存在し、あまり注目されて来なかった。本研究はほとんど知られて来なかった細胞内部分の構造変化を明らかにできると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ε型受容体とδ型受容体について麻酔薬として知られているpancuroniumが作用する濃度が異なることを明らかにした。さらにpancuroniumが作用する部位が受容体の細胞内部分であることも明らかにした。これらの事実は細胞内部分が動作に重要であることを示しており、すでに本研究課題の大まかな目的を達成していると言うことができる。そのため、”おおむね順調に進展している”とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにAChRの細胞内部分にpancuroniumが結合することを明らかにし、この部分がAChRが機能するために重要であることを示した。今後は細胞内部分のどこにpancuroniumが結合するのか、より詳細を調べることを考えている。非天然アミノ酸を受容体に挿入し紫外光を照射するとpancuroniumが共有結合で受容体に結合するため洗い流せなくなるようにする技術が存在する。今後この技術を利用し、細胞内部分の様々な部分に非天然アミノ酸を挿入することでpancuroniumが結合する場所を同定することを目指す予定である。
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Causes of Carryover |
計画当初、紫外光を照射して光クロスリンクの実験を前年度に行う予定であったが予備実験に想定以上に時間がかかった。そのためこの実験で使用する紫外光照射装置の購入を行わなかった。そのため次年度使用額が生じた。次年度はこの機械を購入して、光クロスリンクの実験を行う予定である。
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Research Products
(4 results)