2019 Fiscal Year Research-status Report
食道癌におけるトランスフェリン受容体の機能解明と分子標的薬の探索
Project/Area Number |
19K07339
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Research Institution | Junshin Gakuen University |
Principal Investigator |
山本 裕之 純真学園大学, 医療工学科, 准教授 (10466295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳沼 裕二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (90250571)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トランスフェリン受容体 / 食道癌 / 免疫組織化学染色法 / 分子標的治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、食道癌におけるトランスフェリン受容体の機能解明および分子標的治療薬の探索である。これまでにTCGAデータベースを用いた解析から、食道癌患者の約30%の扁平上皮癌患者に特異的にトランスフェリン受容体遺伝子が増幅し、この遺伝子の増幅を認める患者では全生存期間が優位に短いことが明らかになっていることから、以下の解析を行った。①TCGAデータベースを用いての食道癌組織型別のトランスフェリン受容体の発現量解析②免疫組織化学染色法を用いての正常組織及び食道扁平上皮癌組織におけるトランスフェリン受容体の発現量解析 これにより得られた結果は、①正常食道組織と食道癌組織(扁平上皮癌および腺癌)におけるトランスフェリン受容体遺伝子の発現量解析を行ったところ、食道癌組織での発現量が有意に高いことが明らかになった。また、食道癌組織データを組織型分類し、正常食道組織、扁平上皮癌組織及び腺癌組織の3群間での発現量解析も行った。これより、トランスフェリン受容体は両癌組織型において、正常食道組織より統計的に有意に発現量が高く、腺癌よりも扁平上皮癌において有意に発現量が高いことも明らかとなった。②①で得られたトランスフェリン受容体発現量はmRNAレベルでの解析であるため、患者組織マイクロアレイを用いて正常食道組織および食道扁平上皮癌組織におけるトランスフェリン受容体タンパク質の発現量解析を行ったところ、トランスフェリン受容体はタンパク質レベルにおいても食道扁平癌組織において統計的に有意に増加していることが明らかとなった。これらの解析に加え、現在、分子標的治療薬の探索に向けて、computational docking modelを用い、トランスフェリン受容体のトランスフェリン結合部位特異的に結合する候補化合物をスクリーニング中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当研究室は立ち上げを必要とし、研究機器・試薬等は充分に整備されているとは言えない状況であったため、研究環境が整うまでに数か月の時間を要したことが進捗状況の遅れに影響した。本研究計画で明らかにする点は大きく以下の2つである。①TFRC遺伝子によってコードされるトランスフェリン受容体(TFR)の分子・細胞レベルの機能解析、②TFRを標的とする治療薬の探索である。①はさらに3つの解析、A)TFRの細胞・組織発現解析、B)培養細胞におけるTFR発現量変化に伴う細胞増殖への影響を解析、C)TFRによって制御される下流分子の同定およびシグナル伝達解析から成り立っており、A)はすでに解析を終了している。培養細胞を用いる必要のある解析B)およびC)は次年度に実施予定である。②も3つの解析、A)TFR結合化合物のスクリーニング、B)TFR結合化合物の同定、C)TFR結合化合物のTFR抑制効果の検証から成り立っているが、現在共同研究機関であるミネソタ大学ホーメル研究所にてA)を実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究実施の進捗状況にやや遅れはあるものの、研究計画通りに解析が進んでいるため、大幅な計画の変更はないものと考えている。次年度は本年度において実施に至らなかった、食道癌細胞を用いてのTFR発現量変化に伴う細胞増殖への影響を解析する。同時に、TFRによって制御される下流分子の同定およびシグナル伝達の解析を予定している。これらの解析によりTFRの食道癌とくに食道扁平上皮癌の発生・増殖における新たな役割が明らかになるものと考える。また、TFRをターゲットとした効果的な分子標的治療薬の探索に関しても、現在進行中のTFR結合化合物のスクリーニングによって得られる候補化合物を用いて、in vitro条件下でのTFR結合化合物の同定に加え、同定されたTFR結合化合物のTFR機能抑制および癌細胞増殖抑制効果の検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は研究室立ち上げのために、当初予定していたより多くの消耗品購入が必要となったため、次年度予算の一部の前倒し支払い請求を行った。結果これにより、円滑な研究活動への導入につながったものの、研究計画に予定していた培養細胞を用いた解析のための研究環境整備に時間を要したため、培養細胞の購入にまで至らなかった。同時に、研究分担者によるこれらに関連した解析も滞った。これらより次年度使用額が生じた。次年度では、この次年度使用額と次年度助成金を用い、1)食道癌細胞を用いてのTFR発現量変化に伴う細胞増殖への影響の解析、2)TFRによって制御される下流分子の同定およびシグナル伝達の解析を実施予定である。
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Research Products
(1 results)