2019 Fiscal Year Research-status Report
高精細化ゲノム情報による難治性疾患の原因遺伝子変異同定および高度解析技術の確立
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19K07349
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 修治 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00525404)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | HLA / NGS / 難病解明 / 統計遺伝学 / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
希少難治性疾患の解明に向けて、HTLV-1 関連脊髄症(HAM/TSP)の発症との関係が知られているプロウイルス量と、HLAタイピング結果の解析によって得られたHLA上のアミノ酸残基の情報を組み合わせることで、タイプ別にHAM/TSPの発症率を予測するための統計モデルを構築した(論文投稿中、特許出願中)。今後このリスクをより正確に推定するモデルへと拡張するため、HTLV-1プロウイルス全長配列のシークエンスを行った。IgG4関連疾患においては、835人のIgG4関連疾患患者と1,789人の対照群のHLAアレルの解析から、HLA-DRB1アレルとその抗原提示部位であるG-BETAドメイン7番目のアミノ酸残基位置のバリンを発症との関連変異として同定した(Terao et al., Lancet Rheumatology, 2019)。 HLA解析技術の開発においては、全長配列予測プログラムの改良を行い、主要HLA6遺伝子(HLA-A,-C,-B,-DRB1,-DQB1,-DPB1)の全長配列予測をこれまでに約5,000検体行った。さらに、HLA遺伝子全長配列のシークエンス法における実験方法の改良を行い、次世代シークエンサーを用いてより包括的にHLAアレルを増幅できかつ全長に渡って均質なカバレージでシークエンスすることが可能となった。 希少難治性疾患の横断的解析を推進するための人工知能解析技術の構築に向けて、全ゲノムデータ解析と深層学習を用いた画像解析の融合による、疾患の再層別・分類技術の開発を進めた。本年度は網膜色素変性の全ゲノム解析データと眼底画像を用いて、深層学習による原因遺伝子毎の画像クラスタリング技術を開発し、その効果の検証を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、開発してきたHLAの解析技術と統計モデルを複数の難病解析において適用し、成果が得られており、予定通り研究は進捗している。一部HLAのシークエンスに遅れは出ているものの、HLAの全長配列予測も想定通り進捗している上、当初計画では想定していなかったHLAのシークエンス解析技術の向上が達成できたため、今後の解析における精度向上が期待できる。 人工知能解析技術に関しても画像クラスタリング技術開発が想定通り進んでいる。ただし、原因遺伝子の同定技術に関しては、クラウドシステム上への技術搭載に関して、新規に開発する要件が生じたため計画を一部先送りした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に行ったHTLV-1プロウイルス全長配列のシークエンス結果を基に、HAM/TSP発症に関連する変異の探索を進める。得られた成果を用いて、これまでの開発による発症リスクモデルをより高精度に予測できるモデルへと拡張する。網羅的脂質・代謝物データによるオミックス解析による結果から新たな疾患関連因子が得られた場合、これらをモデルに含めることも考慮する。 初年度に推定したHLA遺伝子の全長配列を用いて、データベースの構築を行う。またHLAのシークエンスの継続による、全長配列データの拡充も同時に進め、解析終了次第データベースに統合する。同時にHLAタイピング・全長配列推定・データベース化のパイプラインの構築も行う。 初年度に開発を進めた、深層学習を用いた画像クラスタリング技術を基礎に、希少難治性疾患の分類・層別化手法の開発を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部のHLAシークエンスの実施計画が先送りとなった。 この分については次年度前半において実施する予定である。
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Remarks |
次世代シークエンスデータを用いたHLAタイピングソフトウェアHLA-HDのサイト。
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[Presentation] 大規模検体における HLA・HTLV-1 プロウイルス量の統合解析による HAM/TSP 発症リスクの推定2019
Author(s)
川口 修治, 清水 正和, 安永 純一朗, 高橋 めい子, 岡山 昭彦, 山野 嘉久, 内丸 薫, JSPFAD, 川上 純, 松岡 雅雄, 松田 文彦
Organizer
第6回日本HTLV-1学会学術集会
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