2020 Fiscal Year Research-status Report
高精細化ゲノム情報による難治性疾患の原因遺伝子変異同定および高度解析技術の確立
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19K07349
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 修治 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00525404)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 希少難治性疾患 / HLA / バイオインフォマティクス / 機械学習 / 人工知能 / 遺伝統計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性疾患である、HTLV-1 関連脊髄症(HAM/TSP)に関して、発症と関わりのあるHLAアレルとそのアミノ酸残基の同定およびプロウイルス量と組み合わせた発症リスク予測法を開発し、国際論文誌に報告した(Penova and Kawaguchi et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2021)。また、1,981検体のHTLV-1プロウイルス全長配列のシークエンスを行い、得られた配列からHTLV-1サブタイプを同定し、HAM/TSP発症との関連解析を行なった。次に、次世代シークエンサー(NGS)によるHLAの主要6遺伝子のシークエンスの高効率化とタイピングの高精度化に向けて、プライマーの改良とシークエンスプロトコールの改善を行なった上、アレルタイピングソフトウェアHLA-HDを改良した。また、HLA遺伝子の全長配列データベースの構築に向けて、NGSシークエンス結果からの配列決定プログラムの精度向上を行なった。さらに、HLAと同様に高多型領域であるKIRの解析に向けて、全ゲノムシークエンスデータからKIR遺伝子コピー数、アレル、ハプロタイプを推定するための手法を開発し、日本人におけるKIRアレルの分布を解析した。 また、全ゲノムデータ解析と臨床情報を融合した、疾患の再層別・分類技術の開発に向けて、網膜色素変性画像を用いた深層学習による疾患部位画像の細分化手法を開発した。開発手法を用いる事で、より高精細に色素変性を抽出した画像から原因遺伝子の特徴を捉えることが可能となり、より精度の高い難病の疾患分類が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発したHLA解析手法を、実際の難治性疾患に適用し、疾患と関連する知見が得られたことは、手法の有用性を示し、本研究の目的の一部を達成できた。開発したHLAの解析手法が、KIRに対しても応用できたことは、これまで解析が困難であった、複雑なゲノム領域を含めたより詳細な難病の関連解析の適用へと繋げることが可能となる。HLA遺伝子の全長配列決定については、今年度のリファレンスデータベース構築を予定していたが、COVID-19パンデミックの影響によるシークエンス実験計画の変更もあり、来年度の完成に変更となった。 人工知能解析技術においては、細分化解析機構を取り入れることで、原因遺伝子毎の画像特徴からより高精細にクラスタリングし、疾患を再分類する技術の開発が進んだ。最終年度において、全ゲノム解析情報との融合を行い、疾患分類手法の完成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに開発したゲノム情報解析技術や人工知能・機械学習技術を融合した難病解析手法の構築を目指す。具体的には、HLAをはじめとする高多型領域のゲノム情報に臨床情報・オミックス情報およびウイルス配列とその変異情報等を統合した情報から、難病に関連する知見を導き出すための関連解析手法を開発する。手法を宿主およびHLTLV-1ウイルスのシークエンスデータに適用し、HAM/TSPの発症と関連するプロウイルス変異およびHLAアレルを導出する。得られた知見を基に、これまでに構築した発症リスク予測モデルの精度向上を図る。 また、これまでに得られた主要HLA遺伝子の全長配列情報に関するデータベースの構築完成を目指す。データベース構築の進捗に応じて、KIR遺伝子情報の追加も検討する。得られた全長配列情報に関しては、関連解析手法の精度向上に役立てる。 さらに、深層学習を用いた診断画像クラスタリング技術を用いて、疾患原因遺伝子もしくは変異を基にした希少難治性疾患の分類・層別化手法の開発を行う。分類・層別化手法は、網膜色素変性をプロトタイプ疾患として開発を進める。分類化された変性画像の特徴に対して、全ゲノム解析情報から得られた、原因遺伝子および変異情報を照合することで、疾患の再分類・再層別を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、出張の取りやめ、実験実施の後ろ倒しがあった。 繰越分については最終年度において、次世代シークエンスによる実験試薬等に使用する予定である。
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