2022 Fiscal Year Research-status Report
卵巣における生体ストレス応答の研究:KEAP1-NRF2制御系の不妊への影響
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19K07361
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
松丸 大輔 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (50624152)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遺伝学的アンドロゲン高産生マウス / 卵巣 / 卵胞 / 酸化ストレス応答 / 抗酸化剤 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、雌性への雄性ホルモンの過剰曝露によって起こる多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)の発症メカニズムの詳細を明らかにすることを目的としている。特に、卵巣において男性ホルモンシグナルに関連して酸化ストレス応答が生じ、その結果生体の恒常性が損なわれることで疾患の発症に至る可能性を考え、細胞・分子メカニズムの解明を目指した。2022年度は、前年度までの状況に起因する研究活動の遅れを取り戻すことはできず、全体として研究計画に遅れが生じた状況である。本年度の実験としては、前年度、アンドロゲン(男性ホルモン)高産生マウスにおいて、一部の炎症関連遺伝子の発現上昇と、卵胞腔周辺における多量の細胞死を見出したことを受け、酸化ストレスマーカー群の発現解析を行った。そして、酸化ストレス応答タンパク質の一部が強く発現していることを見出した。すなわち、酸化ストレス応答を起点として炎症、細胞死が誘導されている可能性が示唆された。次に、抗酸化剤を用いたアンドロゲン高産生マウスの症状回復実験を行った。その結果として、一定の投与条件において、卵胞腔肥厚の縮小、細胞死の減少、細胞増殖の増加、卵胞におけるホルモン受容体発現の回復など、卵巣症状の回復が明らかとなった。しかしながら、その場合においても卵胞組織内に黄体は観察されなかった。すなわち、排卵の回復には至っていない様子であった。次年度は、排卵の回復に至る条件の探索と、生体応答系であるKEAP1-NRF2制御系の修飾によって病態が改善しうるかの解析、高齢マウスの卵巣で見られる症状の類似点・相違点について解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度は、何の制限もなく研究活動を実施できたが、前年度までに生じた遅れの全てを取り戻すことはできなかった。そのような状況においても、遺伝学的アンドロゲン高産生マウスの解析では、その卵巣病態の発現過程に酸化ストレス応答が関わっている可能性を見出すことができ、抗酸化剤の投与によって部分的に表現型が回復する様子を観察することができた。しかし、当該マウスにおいて黄体は確認できず、排卵までは回復していなかったことから、投与条件が適切でない可能性、もしくは卵巣症状は複合的な要因によるものである可能性が示唆された。そして、予定していた、KEAP1-NRF2制御系の薬理学的、遺伝学的制御実験や組織・血漿中ホルモン濃度の測定、高齢マウスの解析等は行うことができなかったことから、全体として進捗状況は遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析により、アンドロゲン高曝露により卵巣に炎症や酸化ストレス応答が生じうる可能性について示唆することができた。また、抗酸化剤の投与により一部の組織症状の回復を示すことができた。しかし、排卵の回復、すなわち不妊の解消の可能性については示すことができていない。抗酸化剤の投与条件の検討が不十分である可能性があるため、投与プロトコールの検討を行う。そして、排卵と卵胞腔の拡大に関わるシグナルが異なる可能性も考え、詳細なマーカー解析を行う。また、生体ストレス応答系KEAP1-NRF2制御系の制御により表現型が変化しうるのかを明らかにする。あわせて、高齢マウスの卵巣症状とアンドロゲン高産生マウスの卵巣症状の類似点と相違点について解析を進める。
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Causes of Carryover |
2022年度は、岐阜薬科大学 衛生学研究室で樹立済みアンドロゲン高産生マウスを用いることで、多嚢胞性卵胞症状の発症の根幹に関わる解析を進めることができた。リソースを効率的に運用できたため、マウス飼育や組織学的解析といった実験のための支出を抑えることができた。学会発表も行なったが、旅費等の負担を抑えることができた。これらの理由により未使用額が生じた。次年度、マウス関連の飼育経費、マウス組織の解析のための試薬・抗体類の購入と、個体サンプルの保存に用いるプラスチック器具類の購入、そしてホルモン測定等の受託解析を行うことを予定している。
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Research Products
(5 results)